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野良のビッチをツモった話

 

あ、ども。

 

人生において、順風満帆な人よりも、つまづいていたり自分の内側と闘い続けたりする人の方が時おり魅力的に見えるのはワタクシだけではないと思います。

 

そういった人の帯びるある種の切なさに、えもいえぬ魅力があると思うのです。

 

ここだけの話なのですが、実はワタクシは人一倍「せつながり」なので「setsunai.tokyo」というドメインを保有しています。

 

いつか「東京せつなさMAP」という切なさ界の大島てるみたいないサイトをローンチしようと思ってます。

 

 

人生は切なさに溢れていますが、特に切ないのはやはり深夜でしょう。

 

深夜は掃いて捨てるほど切なさが落ちているので、人はついお酒に手を伸ばしてしまうのだと思います。

 

 

昨年末の寒い夜でした。

 

閉店後に厨房を掃除し、帰路についた頃にはすでに27時前。

 

 

夜の民がもつ性質なのでしょう。

 

深夜の静けさにおぼえる妙な安心感と冬の風の冷たさが詩的な気分に拍車をかけ、思わず遠回りで住宅街を散歩しながら自宅へ向かっていると、なんと、橋の上に女性がうずくまっていました。

 

「あのー、大丈夫ですか?」

 

ワタクシの声にゆっくりと頷いた女性はどうやら酔っ払っているようなのですが、どの角度から見ても全然だいじょばない状態の人間の風合いを帯びています。

 

念の為もう一度たずねてみました。

 

「大丈夫、ですか?」

 

女性は再び首を縦に振ったかと思うや否や、発情期のナイトサファリから聞こえてくるライオンのような咆哮をあげ、今にも嘔吐寸前といった様子で顔を伏せました。

 

急性アルコール中毒かな?(´・ω・`)

 

 

やばい、やばい、YAVAY!!

 

 

「呼びましょうか、救急車?」

 

あせって体言止めになるワタクシ。

 

 

しかし、女性は無反応です。

 

月夜に密かに産卵するウミガメ同様、誰だって吐瀉物を産み落とす瞬間を見られたくはないでしょう。

 

ワタクシは足早にその場を離れ、最寄りのコンビニへと急行しました。

 

 

ミネラルウォーターと、ついでなので自分用の缶チューハイを購入して元の位置に戻ると、先ほどの女性はキョロキョロと辺りを見回していました。

 

 

「だいじょうぶでし・・・」

 

「タクシー見ませんでした?」

 

やや食い気味に質問で返されて困惑するワタクシに、女性は矢継ぎ早に自分のこれまでの状況を説明しだしました。

 

 

渋谷で飲んでいたこと。

渋谷から歩いてきたこと。

花屋さんで小さな観葉植物を買ったこと。

タクシーを拾ったはずであること。

にも関わらず、いま自分の目の前にはタクシーがいないこと。

 

そして、購入した小鉢の植物をなぜか自慢げに見せてきました。

 

「ほら、もっと直で見てごらん」

 

「直で見る」ってなに?(´・ω・`)

 

 

支離が滅裂で理路が整然としていない女性は、電灯の下でよく見るとまだ二十代前半くらい。

 

まだ自分のお酒の許容量がわからないのかもしれません。

 

ワタクシもよく飲み過ぎて瀕死になるので、なんだか同じ病を持つ同類への憐憫を禁じ得ません。

 

「ここに停まってたタクシー、見ませんでした?」

 

「いいえ。この道はタクシー通りませんよ」

 

「どうして?」

 

「タクシーを拾うならもう少し大きな通りに出た方がいいですよ」

 

12月のド深夜、気温は1桁です。

 

女性がニットワンピの上に羽織った軽そうなコートはウールよりもポリエステルのほうが素材の構成量が多そうです。

 

路上に放置したら彼女はきっと凍死するでしょう。

 

「この先の通りならタクシーを拾えると思います、そこまで案内しますよ。」

 

乗りかかった船です。

 

この女性をタクシーに放り込むまで、ワタクシは通りすがりの親切なおじさんに徹することにしました。

 

 

ピシャリと静まりかえった深夜の住宅街。遠くに見える高層ビルの航空障害灯は東京そのものの脈拍のように点滅を繰り返し、地上では孤独をたずさえて横切る野良猫。そのかたわらの橋の上でひろった、酔っ払いの女性。

 

 

どうせならヒトじゃなくて猫を拾いたかったなぁ(´・_・`)

 

 

「夜の民」をレペゼンして道案内するおじさんはいつものノラ猫が暗がりへ消えてゆくのを横目で見送りながら歩きだしました。

 

 

「どっち方面に向かうんですか?」

 

タクシーが拾えそうな通りまで出て進行方向を尋ねると、彼女は渋谷上空の方角を指差しました。

 

「東中野!」

 

「いや、そっち東中野じゃないよ。」

 

「そうなの?」

 

「ていうかもはやここ東中野だよ」

 

「そうなの? 東中野○丁目・・・・」

 

言い慣れたセリフを唱和するように独特の強弱がついたシンコペーションで告げた住所を検索すると、徒歩10分程度の位置のようです。

 

「わざわざタクシーに乗るような距離じゃないですよ」

 

「そう?」

 

現在地すら把握できないまま歩いてきたのでしょう。

 

「おうちの近くまで送りますよ」

 

あっちです。

 

 

告げられた住所の方向を示すと、突然、逆方向へと走り出す彼女。

 

あ、そっちじゃないよ。

 

 

「気をつけて。そんな走ったら転びますよ」

 

背後から小走りに追いかけるワタクシから逃げるように走る彼女はふいに立ち止まり、振り返りました。

 

「ねえ、名前は?」

 

「え?」

 

彼女の長いコートの裾が風に流れてひるがえります。

 

いつもなら深夜の散歩中に出会った人には偽名を名乗ります。理由はありません。でも、寄付や募金は名乗らずにだまってするものだと思います。

 

「えっと、、、、ワタナベです」

 

束の間の逡巡のあとワタクシが本名を名乗ると、彼女は周囲の家々の眠りを覚ましてしまいそうなほど大きな声で笑いました。

 

「うそでしょぉwwww」

 

一瞬でも偽名を名乗ろうと考えたことを見透かされたような気がしました。

 

「嘘じゃないよ」

 

「嘘だぁ」

 

「ほんとだって、免許見せようか?」

 

なまじ偽名を名乗ろうと思ってしまったぶん、わたくしも妙にムキになってしまいます。

 

「えぇ、嘘でしょ?ww」

 

「なんでそう思うの?」

 

「日本人じゃないでしょ?ww」

 

「日本人だよ」

 

「だって、超カタコトじゃん!ww」

 

 

 

そうです。

 

今まさしく彼女に指摘されてしまいました。

 

ご存知のようにワタクシは滑舌が悪いです。

 

人より少し悪いくらいかなぁと思っていたのですが、どうやら外国人レベルだったようです。

 

 

恥の多い生涯でした。

 

サ行とラ行の言えない生涯でした。

 

 

見えない角度から銃口を突きつけられたようなクリティカルな一言にワタクシは思わず足を止めて、立ち尽くし、乾いた声で笑いました。

 

「ははは。日本人なんだよね、おれ」

 

 

「ねえ!日本に来て何年? 留学生?」

 

彼女は搾りたてのグレープフルーツのようにみずみずしい眼差しでたずねてきます。

 

「日本人のこと本当はどう思ってる? 好き?」

 

「好きだよ」

 

「日本のことも好き?」

 

「もちろん」

 

「あたしも韓国人大好き!」

 

「え?」

 

「韓国人でしょ?」

 

「日本人だよ」

 

「韓国に行ったことあるよ、あたし」

 

「おれもあるよ。楽しいよね韓国」

 

「ソウル?」

 

「ううん。妹と釜山旅行」

 

「妹は地元に住んでるの?」

 

「地元?」

 

「釜山」

 

「いや、釜山出身じゃないって」

 

 

どうやらお盆の里帰りか何かと勘違いしているようです。

 

ワタクシを韓国人だと早合点した彼女のテンションは日銀による為替介入があった日の円相場なみに爆上がりし、勇み足であらぬ方向へと歩き出しました。

 

 

だからそっちじゃないって。

 

「ねえ! 東京に住んで何年?」

 

「もう20年近く」

 

「それまでは釜山に住んでたの?」

 

「いや、静岡」

 

「じゃあ子供のころに日本に来たの?」

 

「だから違うって」

 

「隠さなくても大丈夫だよ、ほんとのこと言ってごらん」

 

「きみ、名前は?」

 

「Nちゃんって呼んで」

 

 

川沿いの遊歩道を左に折れて缶チューハイのプルタブを押し上げると、乾いた音をかき消すようにNちゃんがまくしたてます。

 

「ねえ! 日本人ってどう? 日本のことどう思ってる? 日本人の女の子好き? 本当はどう思ってる?」

 

「好きだよ、日本人も韓国人も」

 

「あたしも!」

 

 

缶チューハイを口に含もうとマスクを外したその時でした。

 

 

ゼロ距離まで歩み寄ったNちゃんが、突然ワタクシの口に唇を押し当ててきました。

 

 

不意打ちの接吻。

 

 

今さらおじさんの貞操など価値もないので別に構わないのですが、なにせこのご時世です。

 

 

まさかこいつ陽性者じゃないだろうな (゚∀゚)!! ぉぉおんっ!!( *`ω´)

 

 

 

というかそもそも、これ・・・・事案だよね。

 

酔っ払ってむりやり見ず知らずの人に接吻とかたまにニュースになってるような類のやつやん。

 

 

力の加減がわからなくなっているNちゃんがメスゴリラ並みの握力でワタクシの肩を掴みながら接吻を続けます。

 

 

・・・うぐっ・・・苦しいんですが。

 

 

「とにかく、おうちの方向まで送るから、まず歩こうよ」

 

ようやくの思いでNちゃんを引き剥がし歩き出すと、冬の風に吹かれて乾いた唾液の匂いが立ち昇ってきます。

 

 

そうです。

 

人間の口腔内は雑菌にまみれているので、唾液が乾くとマジくっさいのです(´・_・`)

 

 

しかも酔っ払いの唾液です。

 

 

「あたし韓国人大好き!」

 

「いや、おれ韓国人じゃないってば」

 

「嘘つかないで!あたしには分かる!だってカタコトだもん!」

 

 

さらに左に折れて坂を登っていると、坂の途中で再びメスゴリラ並みの接吻をしてきます。

 

反射的に突き飛ばしたくなる衝動を自制し、Nちゃんのメスゴリラタイムが終わるのを待ち、再び歩き出す。これを十回ほど繰り返しようやく伝えられた住所の近くまで到達しました。

 

 

「おうちはどっちの方角? もう1人で帰れる?」

 

 

大通りまで出て口の周りがベタベタでプンプンになったワタクシが尋ねると、Nちゃんは再び渋谷上空の方角を指差し言いました。

 

 

「あっち」

 

だ・か・らぁっ!!

 

そっちは渋谷じゃん!

 

 

「違うでしょ。さっき言ってた住所だと逆方向だと思うよ」

 

「あなたは?」

 

「え?」

 

「あなたの家は?」

 

「うちはあっちの方向だよ」

 

 

適当にあしらうとNちゃんは執拗にワタクシの自宅の方角を訪ねてきます。

 

 

「ここからだとだいたいあっちの方角だよ。10分くらい」

 

 

自宅の方角を指し示すと、Nちゃんも自分の人差し指を差し出し、ワタクシの指に重ねてきました。

 

「あたしも〜」

 

「ん?」

 

「あたしもあっちの方向。 行こう!」

 

ワタクシの手を引いてNちゃんが歩き出します。

 

 

「ねえ! どっち〜?」

 

自分が引っ張っているくせに進行方向を訪ねてくるNちゃん。

 

「あのさ、もしかして俺の家に行こうとしてる?」

 

ワタクシが一抹の不安をおぼえて尋ねると、

 

「大丈夫、何もしないから」

 

と、絶対何かするやつが言いそうなことを平然と言ってのけるN。

 

「ちゃんと自分のおうちに帰りなよ」

 

「大丈夫!」

 

「こっちが大丈夫じゃないんだけど」

 

「玄関だけ!玄関だけだから!」

 

「なにその『先っぽだけ』みたいなやつ」

 

「玄関だけ!」

 

「玄関だけ入られても困るし」

 

「玄関で韓国のラーメン食べよう!」

 

「なにそれwww」

 

「あるでしょ、ラーメン」

 

「ないし。玄関で食事しないし。自分の家で食べなよ」

 

「お願い〜」

 

と手を合わせるや否や、その場にストンっとしゃがみ込んだNちゃんが、ワタクシの右手の指を舐めだしました。

 

 

不可解すぎてそのばに立ち尽くすワタクシと、しゃがみ込んでワタクシの中指をディープスロートするNちゃん。

 

これらが深夜の住宅街の路上で繰り広げられるカオス。

 

Nちゃんに咥えられた指を引き抜き、その手のやり場に困りあぐね、手持ち無沙汰でスマホを握ると、表示された時刻は3時27分。

 

あ、27時27分だ。2727。

 

 

この時点で既に出会ってから30分が経過しています。

 

この30分間、住宅街をぐるぐるしながら繰り返される強引な接吻に耐え、さすがに鈍感なワタクシでもNちゃんの本性には察しがつきました。

 

 

そうです。

 

まれに白人などの特定のステータスに対してやたら貞操がゆるくなる女性がいるように、Nちゃんはどうやら韓国人専門のヤリマンだったのです。

 

 

滑舌が悪いだけで韓国人に間違われてしまった男 VS 韓国人専門のヤリマンの酔っ払い。

 

出会ってはいけない2人が出会ってしまいました。

 

 

やりとりの詳細は省きますが、

 

とにかくNちゃんは韓国人専門のファーストフードなので、お持ち帰りされた上でお召し上がりされたいようです。

 

 

「嫌だよ。知らない人を家に入れたくない。それに俺は韓国人じゃないし」

 

こんな危険人物をシャバに出したままにしてはいけない。

 

「ねえNちゃん、さっきの住所もう一回言って」

 

「どうして〜?」

 

「もうベロベロじゃん。近所まで送るから帰った方がいいよ」

 

「あなたの住所は?」

 

「北新宿」

 

「あたしも〜」

 

またそのパターンかよ。

 

「あなたは仕事帰りなの?」

 

「そうだよ」

 

「仕事は居酒屋〜?」

 

「よくわかったね」

 

「新宿でしょ?」

 

「・・・うん」

 

「日本人の女の子好き〜?」

 

「そうだね」

 

「あたしも韓国人好き〜」

 

 

おれ、ほんとうに日本人なんだよ。

 

いくらそう言っても滑舌が悪すぎて信じてもらえない悲しさ。

 

もう、このままこの場に放置してしまおうか。

 

しかし事故にでもあったら可哀想だし。

 

最初に親切に助けてしまったばっかりに。

 

でもここで別れたとしても、もしかしたら自宅まで尾行してくるかもしれない。

 

ていうか今夜も寒いな。

 

 

さまざまな感情が去来し、困惑と諦念とが頭の中をグルグルとストラグルします。

 

「ちゃんとおうちの近くまで送るから住所言って」

 

「あっち〜」

 

メスゴリラタイムが終わると再び歩き出し、しばらくすると足を止めて

 

「日本人のことどう思ってる? 好き?」

 

「うん」

 

再び強めに接吻するNちゃん。

 

 

もはや慣れっこのワタクシは妙に醒めた気持ちと冷ややかな眼差しでそれを受け入れる。

 

 

 

「ねえ! 一緒に飲もう!」

 

しばらく歩くと、すでに消灯している飲食店のドアをガンガン叩くNちゃん。

 

「もう閉まってるよ、こんな時間だよ」

 

「じゃああなたのおうちで飲もう!」

 

「嫌だよ」

 

一晩で何度これを繰り返すのだろうか。

 

 

 

月の見えない濁った空が覆いかぶさった東京。

 

真冬の凛烈な空気を揺らすように、時おり遠くで新聞配達の原付のエンジン音が聞こえては止まり、聞こえては止まる。

 

瀟洒なマンションのエントランスに灯る橙色のあかり。風に運ばれて横切るコンビニ袋。これから目覚めようとする静けさに満ちた住宅街を、カタツムリのような速度ですすむ我々。

 

 

少しづつ酔いが覚めてきたのか、Nちゃんも徐々に会話が成立する程度に回復してきました。

 

Nちゃんは何のお仕事をしてるの?

 

韓国人の話をするときは瞳に潤いたたえていたNちゃんが、仕事の話を聞かれた瞬間どこか自嘲するように目を逸らしたのがとても印象的でした。

 

 

○○するだけの仕事っす。

 

その物言いにもどこかNちゃんの苦悩が滲んでいるようでした。

 

 

きっと仕事で辛いことがあったのだろうな。そうだよね。だからこんなに酩酊するまで飲んじゃうんだよね。

 

でもそれは、ひるがえって、仕事に本気で取り組んでいることの裏返しでもあるよ。

 

 

「そんな言い方しないで。素敵なお仕事じゃん。好きでやってるんでしょ?」

 

Nちゃんは答えませんでした。

 

給料が〜とか人間関係が〜とか始まりそうな気もしたのですが、黙ったままのNちゃんの口元はほんの少しだけ笑っているように見えました。

 

 

 

「覚えてる?」

 

「なぁに?」

 

Nちゃんが繰り返す「あっち」「あっち」に従って歩いているうちに我々は最初に出会った橋の前までたどり着いていました。

 

「ここで吐きそうになりながらタクシーを拾いたがってたんだよ」

 

「うん、思い出した」

 

「ここまでで大丈夫かな?」

 

「うん。もう大丈夫。ありがとう」

 

もう2度と会わないだろう。それを承知で言ってみました。

 

「今度さ、さっき閉まってたお店で一緒に飲もうね」

 

自分が酔っ払って飲食店のドアを叩いたことを忘れているのでしょう。

 

当惑した表情のNちゃんは何も答えずに橋の奥へ、ワタクシは橋の手前へ引き返しました。

 

「じゃ〜ね〜」

 

「うん。あのさ、」

 

これを言ったらどうなるかな。

 

この一夜の物語にオチをつけたい衝動を抑えきれず、去ってゆくNちゃんを呼び止めて手を振りながら言ってみました。

 

 

「あのさ、おれ、本当は釜山出身の日本語学校に通ってる留学生なんだ!」

 

 

嘘でしょ〜〜。

 

最初に滑舌を指摘された時のような大声で言ってくれることを期待しましたが、Nちゃんの薄手のコートがひるがえることはありませんでした。

 

 

あっ、、、。

 

踵を返し、とっくに空になった缶チューハイをコンビニ袋に放り込むと、

 

ビニール袋の中には、缶チューハイと一緒に買ったネラルウォーターが入っていました。

 

 

渡し忘れたままだったんだ。

 

キャップをあけて、Nちゃんの唾液でベトベトになった唇を洗い流すつもりで澄んだ水を飲み込むと、なぜか乾いた唾液の強烈な匂いがぶり返してきました。

 

 

くっっっっっさっっっ!!!!!!( ;∀;)

 

 

 

消費行動について考える

 

さて、

 

多くの企業がそうであるように、当店も10月に一部商品を値上げさせていただきました。

 

一方で、値下げ可能な商品を値下げしたり、表記価格を税込みへと変更し実質的な値下げを試みてみたりし、

 

微力ながらも「お得感」を創出してまいりました。

 

 

ところが結果は伴わず、その戦略はパーフェクトに間違いでした。

 

そう。

 

気づいてしまったのです。

 

「安い」とか「量が充分」という実利的な側面からの動機づけを意識した価格設定ではなく、「あの店だから」とか「あの人がいるから」という店づくりをしなければポストコロナ時代の飲食不況は生き残れないのではないだろうか。

 

 

すなわち、「付加価値」での来店を促すことが小規模店の生存戦略の最適解だと考えるようになりました。

 

 

付加価値として消費されるもの。

 

それが何なのかを考えるたびに、一年以上前のあの夜のNちゃんとの強烈な邂逅をふと思い出すのです。

 

滑舌が悪くて韓国人と勘違いされ続けた経験。というキチガイホイホイわたなべのすべらない話としてこれまで何人もの相手に披露してきました。

 

爆笑をかっさらうと同時に、話を聞いた人は男女問わず異口同音にこう言います。

 

「連れて帰ってヤっちゃえばよかったじゃん」

 

 

それに対しワタクシは往々にして、

 

「付き合ってもくれない女とやってどうするの? だってヤッても恋人になってくれないんでしょ?」

 

小泉進次郎構文で返していました。

 

 

ふと気がついたのです。

 

これこそが付加価値なんじゃないか。

 

いわゆる記号消費です。

 

「韓国人」を記号として執着し奔放に漁るNちゃんより、上記のようなことを真顔で答えるアラフォーバツイチ滑舌故障中メンヘラおじさんのほうが、どうやらよっぽど異端らしいです。

 

 

いえ、むしろ消費行動としては前者の方が俄然メインストリームなのかもしれないです。

 

 

そうです。

 

案外、人間の消費行動に「実利的な動機」って必要ではないのかもしれません。

 

 

そう考えると、仕入原価が高騰しているのでそれに準じて売価を上げるという当たり前の商習慣を勝手に申し訳なく感じ、無理をして「お得感の創出」のための値下げをしても刺さる顧客は極めて少数で、ひたすら自分の首を絞めるだけのような気がしてきます。

 

 

安いから、量が多いから、そんな理由で人は消費行動を起こさないのです。

 

よしんばそのような理由で選ばれたとしても、それはしょせん代替可能な魅力に過ぎません。

 

 

「あの空間だから」

「あの従業員だから」

 

 

極端に言えば商品が何であっても来店されるような店というのが、勝ちパターンなのだと思います。

 

まさしく記号消費の対義語である「使用価値」をアピールしてもお客さんは増えないのです。

 

 

 

名物店長になるか、看板娘を雇うか。

 

コミュニケーションおばけで、まさしく名物店長と言っていいワインバーを営む知人がいます。

 

決して安くはないお店ですが、大変繁盛されています。

 

 

コミュ力が高すぎるが故に、時おり、男性客を面罵したり女性客のおっぱいを揉んだりしているそうですが、それでもマスコット的な存在の従業員というのは価格などの実利的価値を上回る集客の手段なのだと、いつも気付かされます。

 

 

私は彼を(人間的にはともかく、料理の腕と集客の巧さに関しては)たいへん尊敬しています。

 

 

そこで改めて彼我の差をつぶさに睨んでみると、

 

当店がこれまで行ってきた「無理して一部商品を値下げしてお得感を出す」とか「クーポンを乱発する」といった集客戦略が誤りてあったとこはもはや自明であり、

 

価格ではなく従業員のマスコット性に軸足を置いた店づくりにシフトすべきだと思うのです。

 

 

すなわち、

 

ワタクシが名物店長になるか、看板娘もしくは看板おじさんを雇用するという方法しか残された手段はありません。

 

前者はおそらく難しいでしょう。

 

なんというか、キャラが弱いんですよね、おれ。

 

フロントマンとしての魅力がないんです、おれ。

 

ノーマルな男なのです、おれ。

 

 

念の為「店長との握手権」という、シンガポールでノースフェイスのダウンを売るような需要を誤ったクーポンを発行してみましたが、やはり結果は鳴かず飛ばず。

 

 

かといって後者はどうかというとやはりこれも難しいと思います。

 

飲食業は依然として深刻な人材不足です。

 

強烈なキャラのスタッフの雇用は容易ではありません。

 

そもそも連日にわたってバイトを雇用する余裕もありませんしね。

 

 

 

一日店長

 

店長を入れ替えてみるのはどうでしょうか。

 

ワタクシではない人間が店長になる。

 

単発の一日店長企画です。

 

 

例えばファンが数人いる一般人って意外と少なくありません。

 

ネット上の友人やゲーム仲間。創作活動やサークル。ブロガー、アマチェアの絵描や物書き。YoutuberやTikToker、ネット配信者。アルファツイッタラー。

 

いつかM1グランプリを獲る予定の人、いつか日本アカデミー賞助演女優賞を獲る予定の人、いつか武道館でワンマンやる予定の人。

 

営業チームのメンバーをまとめるリーダー、経理部の名物おじさん、地域ののんだくれ有名人。

 

パパ友ママ友仲間のリーダー。

 

 

バーイベを主催してみたいとお考えの方、是非当店で一日店長やってみませんか。

 

 

もちろん一日店長さんへの給与はお支払いいたします。

 

【給与】

物販、チェキの売上=100%バック

飲食売上=売上高に応じて変動バック率

売上0円〜20,000円までの分=20%バック

20,001円〜40,000円までの分=40%バック

40,001円〜60,000円までの分=60%バック

60,001円〜80,000円までの分=80%バック

80,001円以上の分=100%バック

 

 

どうです?

 

悪くないでしょ?

 

 

例えば飲食売上が50,000円の場合、

20,000円までの20%=4,000円

20,001円〜40,000円までの40%=8,000円

40,001円〜50,000円までの60%=6,000円

 

合計18,000円が一日店長の日当となります。

 

累進変動性なので売上が上がれば上がるほど店長の給与が増えます。

 

さらに持ち込みの物販が売れたら、それは100%バック。

 

チェキ(こちらで用意してます)の売上も100%バック。

 

 

 

飲食は、メシやドリンクを売るのではなく、人を売るのだというコンセプトで考えてみた企画です。

 

 

ご興味ありましたら、是非各種SNSなどからお問合せください。

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Instagram→https://www.instagram.com/nakanoskue/

LINE→https://lin.ee/xqc0okn

 

 

 

スペシャルサンクス

 

例によってまた長くて読みづらいブログを書いてしまいました。

 

厳密に言えば11月の時点で九割書き上がっていたのですが、

 

12月にメンがヘラり散らかしてギチギチしてしまい、ろくに告知もできぬままになってしまいました。

 

 

ブログも集客に寄与していることをちょっとだけ自覚しているので、更新頻度がガタ落ちしている点は反省しております。

 

 

 

さて、人に自慢できることなどただの一つもないワタクシですが、

 

唯一自慢しても許されるかなと思うのは、

 

周囲の人に恵まれているという点です。

 

これに関しては、大変幸運な人生を歩んでいると自負しております。

 

 

今回の企画も、そんな酒飲み仲間からの発案から着想を得たものです。

 

本当にありがたいっす!!!!!

 

 

まだまだ見切り発車の段階で、どれだけお客さんに喜んでいただけるかわかりませんが、

 

まあ、1800グラムの未熟児で生まれたワタクシは、

 

生まれた瞬間から見切り発車の人生だったのでしょう。

 

なにせ出産予定日よりも1ヶ月近くはやく生まれてしまったのですから。

 

 

 

というわけで、たくさんの一日店長が生まれることを願っております。

 

それでは。

 

 

p.s.

そんなわけで、レディースデーはコンセプトの真逆になってしまったので縮小させていただきます。

 

シン・レディースデーは休業カレンダーにて改めてご案内しますね。

 

 

>馬鹿だからブログやってます。

馬鹿だからブログやってます。