春の足音

春の足音

 

あ、ども。

 

随分と春めいてきましたね。

 

麗らかな陽の光の中をお散歩するのはたいへん気持ちがいいものです。

 

 

皆様は春の訪れをどんな時に感じますか?

 

桜の開花、スギ花粉の飛来、新たな芽吹き、街で見かける卒業式の装い。

 

 

前の記事でもそうでしたが、

 

ワタクシは「変な人」とのエンカウントに、「ああ、春がきたんだな」と感じます。

 

 

廃棄物と愛しぬくで踏める

廃棄物と愛しぬくで踏める

 

土曜日の夜でした。

 

閉店後、終電を逃した常連客M氏と会話をしながらまどろんでいると、店の外から大声と鈍い音が聞こえました。

 

 

「え? なんの音?」

 

 

M氏と顔を見合わせ、そろりとドアを開けて顔を覗かせると、

往来を歩く男性が

終業時に店先へ出しておいた当店の一日分のゴミが詰まったゴミ袋を蹴っていました。

 

 

咄嗟の出来事にKAT-TUN、いえ、カチーンときたワタクシは思わず男性を呼び止めました。

 

「おい! なに人の店のゴミ蹴ってんだよ!」

 

すると男性は立ち止まり、ワタクシと向かい合う恰好になります。

 

「・・・・・・」

 

おや?

これは一触即発か?

 

中学生の頃のようなひりついたタイマンの空気が流れますが、実は、ワタクシにはアドバンテージはありません。

 

なぜなら、前日にジムで上腕三頭筋と大腿筋を追い込んだ影響で、全身の筋肉痛にさいなまれていたのです(´・ω・`)

 

殴り合いになったら負けるかもしれない。なにしろ筋肉痛だし。(´・ω・`)

 

 

一方で、ワタクシには「正義」という名の絶対的な強みがあります。

 

その上、麻生太郎なみに思ったことをすぐに口に出してしまう因果な性格でもあります。

 

 

「人の店のゴミ蹴ってんじゃねーよ」

 

 

すると30歳くらいの男性は、ワタクシの目をジッと見て、

 

「・・・すいません」

 

と素直に謝罪しました。

 

「お兄さん、なんでそんなことするの?」

 

「・・・すいません」

 

当店に恨みでもあるのでしょうか?

 

「だめだよ。そんなことしたら」

 

「・・・はい」

 

男性がゴミ袋を蹴ったためなのか、いくつかのゴミが袋から飛び出して歩道に転がっています。

 

「ちゃんと元に戻して」

 

「・・・すいません」

 

 

 

が、ここからがドタバタ劇のはじまりでした。

 

 

 

謝罪の言葉を述べた男性は、

 

なぜか

 

そのまま

 

当店のゴミを片手で掴み

 

スタスタと歩きだしたのです。

 

 

 ・・・・・え???(´・ω・`)

 

 

マジのガチで意味がわかりませんが、あろうことかワタクシの眼の前で当店のゴミが盗まれたのです。

 

 

と同時に、ある苦い思い出が追憶の彼方から蘇ってきました。

 

開業して間もない頃でした。

 

ある夜、当店の店先に当店と無関係のゴミ袋が放置されたことがありました。

 

ご存知のように、飲食店のゴミは事業系一般廃棄物(事業ゴミ)です。

 

事業ゴミを出す事業所はどこも産廃業者と契約し、家庭系一般廃棄物(家庭ゴミ)とは別のルートで回収してもらっています。

 

奇しくも、その夜に放置された無関係のゴミは、当店が契約している産廃業者の専用ゴミ袋に包まれていました。

 

無関係のゴミだろうが当店の店先に廃棄されたものを回収した場合、産廃業者は当店からのゴミとして処理します。

 

したがって、当店の店先に置かれているゴミの処理費用はすべて当店に請求されるのです。

 

当時は開業直後だったので「新参者への洗礼か」と苦汁を飲みましたが、もしかしたらこうやって深夜に盗んだ他店のゴミをまったく別の店舗の店先へ移動させるようなイタズラをする輩がいてもおかしくはありません。

 

 

そうか( ゚д゚)ハッ!

 

 

あの時もこうして別のお店のゴミがうちの店先に移動させられたに違いない。

 

決して同業者による嫌がらせではなく、第三者のイタズラだったんだ!!

 

三年前の思い出がいま、一本の線で繋がりました。

 

 

ゴミ窃盗犯

ゴミ窃盗犯

 

「ねえ!」

 

当店のゴミを片手にスタスタと歩いていく男性を、ワタクシもスタスタと追いかけます。

 

「お兄さん、ゴミ返してよ!」

 

 

「・・・・・・」。。。。。 ((( ・o・) スタスタ。。。。

 

 

「ちょ、マジでなにしてんの?」

 

 

「・・・・・・」。。。。。 ((( ・o・) スタスタ。。。。

 

 

イタズラにしても、強引すぎますし、そもそも意味不明です。

 

 

「・・・・・・」。。。。。 ((( ・o・) スタスタ。。。。

 

 

(無視されたら、敵わんなぁ(´・ω・`)

 

 

背後から羽交い締めにしてゴミを取り返すという手もありますが、それはそれで乱暴です。

 

その上、ワタクシは筋肉痛なのです(´・ω・`)

 

 

(やむをえん、とりあえずこのまま追尾しよう(´・ω・`)

 

 

ゴミを持ったまま無言で早歩きする男と、その背後を追いながら早歩きする手ぶらのワタクシ。

 

 

意味不明な構図のまま50メートルほど歩いたところでした。

 

 

あるマンションを角を右に曲がった男性は、そのままマンション専用のゴミ置き場のドアを開けて当店のゴミを放り込んだのです。

 

 

おっと、これはいけません。

 

市区町村によっても変わりますが、事業ゴミを家庭ゴミに紛れさせて廃棄するのはルール違反。

 

場合によっては産業廃棄物処理法に抵触する可能性もあります。

 

ましてや他所のマンションのゴミ置き場へ放り込むなんて言語道断です。

 

その上、ゴミの中身は当店から排出された廃棄物です。

 

ゴミを開ければ当店宛の郵便物も入っているでしょう。

 

ゴミの発生主が当店であることは、たちどころに判明します。

 

ワタクシがやった事ではなくても、管理者責任というものがあります。

 

第三者のイタズラとはいえ、意図しない不正に手を染めてしまう結果になってしまいます。

 

 

「おい!」

 

ワタクシは慌てて男性の前へ立ちはだかりました。

 

「なにやってんだよ!」

 

 

すると立ち止まった男性は、ようやく口を開きます。

 

「いいじゃん。捨てたんだから」

 

そういうことを言ってるんじゃないですけど、、、。(´・ω・`)。

 

「人のゴミを勝手に棄てるなよ!」

 

我ながら、なんて間抜けな発言でしょうか。(´・ω・`)

 

しかし決して間違ってはいません。

 

「元にもどして」

 

「捨てたんだからいいだろ」

 

「いい? お兄さんね、そもそも事業ゴミっていうのh、、」

 

「え? ストーカー?」

 

 

 

は???(´・ω・`)

 

 

突然ワタクシをストーカー呼ばわりしだした男性は、深夜の住宅街に響き渡る大声で叫びました。

 

 

「ストーカーだ!」

 

 

 

 

 

・・・・・・春ですね。

 

 

 

「ストーカー!!!こわいこわいこわいこわいこわい!!!!」

 

BPM200のトラップビートにのせたラップのように「こわい」を連発しながら、男性は脱兎のごとく走り出しました。

 

 

「こわいこわいこわいこわい! 逃げろぉ!!!」

 

 

「ちょ、待てよ!」

 

キムタクのものまねを差し込んで、ワタクシもサンダルのまま深夜の住宅街を追いかけました。

 

 

 

逃げるゴミ窃盗犯。

 

 

追うサンダルおじさん。

 

 

ゴミ争奪!中央一丁目マラソン!

TBSのオールスター感謝祭!赤坂5丁目マラソン!のような華やかさもなければ沿道に観客もいません。

 

静まり返った住宅街を小学生のマラソン大会ぶりの長距離疾走です。

 

 

ストーカーだぁ。

ε=ε=ε=┏(゚ロ゚;)┛ダダダッ!!

 

 

ゴミかえせ。

ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ・_・)┘

 

 

 

てんやわんや

てんやわんや

 

 

ストーカーだぁ。

ε=ε=ε=┏(゚ロ゚;)┛ダダダッ!!

 

 

ゴミかえせ。

ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ・_・)┘

 

 

そのまま全力疾走で住宅街の路地をぐるりと回って、元のマンションのところへ戻ってきたところでした。

 

男性は自販機の前で急に立ち止まり、おもむろにスポーツドリンクを購入しました。

 

 

え? 給水所なの?

 

 

「ねえお兄さん、どこの人?」

 

 

ようやく追いついたワタクシの心臓はシンセベースが爆音でうなる巨大なスピーカーのように張り裂ける寸前です。

 

 

「・・・・・・」

 

「どうしてうちのゴミ盗んだりしたの?」

 

「・・・・・・」

 

 

駄目だ。埒が明かない。(´・ω・`)

 

 

「いいから、ゴミ返して」

 

「・・・・・・」

 

「うちのゴミ、元の場所まで戻して」

 

「・・・・・・」

 

 

(´・ω・`)

 

 

やむを得ません。

 

厳密に言えば居住者ではないワタクシが勝手にマンションのゴミ置き場へ入るのは好ましくありません。

 

しかし、男性が無視を決め込むのですから、仕方のない状況と言っていいでしょう。

 

 

(決して不審者じゃないんですよ。事情があってゴミを拾い上げているだけですよ)

 

(´・ω・`)

 

 

あらぬ疑いをかけられまいと心の中でつぶやきつつ、マンションのゴミ置き場から当店のゴミをピックアップしていると、歩道の向かいからワタクシを呼ぶ声が聞こえました。

 

 

「どうしたんですか?」

 

よく見ると、常連のTさんでした。

 

 

ご自宅のベランダで夜風にあたっていたところ、ワタクシが男性と揉めている姿が見えたので降りてきてくれたそうです。

 

 

「どうされたんです?」

 

「なんか、うちのゴミが盗まれたんですよ」

 

「いつも盗まれるんですか?」

 

「いえ、たぶん初めてだと思います。ただ」

 

ゴミを盗むというイタズラなんて、日常的にやられても気付きようがありません。

 

「ただ、とにかく意味がわからない状況なんです」

 

そう言われて最も意味がわからなかったのは、恐らくほかでもないTさんでしょう。

 

 

とはいえです。

 

「ゴミが盗まれた挙げ句ストーカー扱いされて深夜の住宅街を全力疾走したんです」

 

なんて説明したら、キワキワの人みたいに思われてしまいます。

 

 

 

キワキワなのはゴミ窃盗犯であって、断じてワタクシではありません。(`・ω・´)

 

 

 

Tさんと話をしていると、今度は店で待機していた常連客M氏が出てきました。

 

 

「警察に電話しましょうか?」

 

 

スマホを持たずに店を出ていったワタクシにかわって中野坂上交番へ電話しようとしてくれているようです。

 

すでにゴミは取り返したのでどちらでも良かったのですが、念の為に巡回強化を要請するのも悪くありません。

 

ある知人女性は夜道で痴漢被害にあった際に交番へ相談したところ、犯行現場付近の巡回を強化してくれたそうです。

 

警察としても管轄する街のどの位置でどのような事案が発生したかという情報はほしいでしょうし、今後、当店だけではなくほかの飲食店も同じようなゴミ盗難の被害にあうかもしれません。

 

いい年こいて「FUCK THE POLICE」なんて悲しいを超えて怪しすぎます。

 

地域住民としての自覚も持つべきでしょう。

 

 

「うん。じゃあ、お願いします」

 

 

すると、M氏は深夜の住宅街に響き渡るほどのクソでかい声で電話をしはじめました。

 

 

 

 

 

・・・・・・春ですね。

 

 

 

 

 

 

しかしそのクソでかい声が功を奏したのか、男性も立ち止まりました。

 

 

「お兄さん、どうしてゴミ盗んだの?」

 

追いついた我々が問いただすと、男性は先程までとは少し剣幕が違いました。

 

「・・・・・・すいませんでした」

 

「いや、どうして盗んだのか聞いてるんだけど」

 

「・・・・・・すいませんでした」

 

「人のゴミ盗んじゃ駄目だよ」

 

「・・・・・・すいませんでした」

 

 

すると男性はふたたび全力疾走で山手通りの方向へ走っていきました。

 

 

なんだったんだ(´・ω・`)

(´・ω・`)

 

狐につままれたような、何がなんだかよく分からない感情だけが、そこには残ってました。

 

 

「ただの酔っ払いですかね?」

 

「ほんと意味不明でしたね」

 

「じゃ、帰ります」

 

「すいませんTさん、お騒がせしました」

 

 

 

大切なゴミを取り戻して店に戻ると、さっきまで大声で電話していたM氏も帰ってきました。

 

 

 

「で、おまわりさん来るんですか?」

 

「いや、あれは演技です」

 

 

 

 

深夜に大声で通報するような声が聞こえてきたら、それは春の足音なのかもしれません。
 

 

 

 

 

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