ミスアンダースタンディング

 

あ、ども。

スマホを片手に住宅街をうろつく野生のワタクシの目撃情報が相次ぐほど、最近ではすっかりドラクエウォークにはまっています。

 

楽しいですね、ドラクエウォーク。

 

「あ、店長また散歩してるよ」

 

きっとすれ違う界隈の方はそう思っていらっしゃるかもしれませんが、実は違うんです。

 

そう。

 

ワタクシは自意識過剰の店長などではありません。

 

現実のワタクシはあくまで仮の姿。

 

ワタクシの正体は、世界を救う戦士わたなべ(レベル16)なのです。

 

(`・ω・´)

 

ふっ。

 

なめてもらっちゃ困るよ。

 

うだつの上がらない自営業の飲食店店主だと思ってただろ?

 

低身長のブサメン短足ヒゲ野郎のワタクシなんて、こっちの世界の仮の姿に過ぎないのだよ。

 

本当のワタクシはロトの血を引く選ばれし存在なのですよ。

 

筋骨隆々のイケメンだし、強いし、ローラ姫とかにだってモテるんだからね。ほんとだからね!!

 

ロトの血を引くのワタクシは、日曜の朝から道路工事がうるさくてもイライラしません。

 

なぜかって?

 

いざとなれば仲間のパンプキンがギラを唱えてくれるのさ。

 

こっちが本気を出せば、道路工事などたちどころに殲滅できるのです!

 

ふっ。

 

なめてもらっちゃ困るぜ、まったく。

 

(`・ω・´)

 

 

 

ドラクエウォークのフィールド画面は、現実世界の道路地図をエンハンスして世界観を落とし込んだ設定になっていて、DPSで位置情報を拾い上げながら現実世界での移動をフィールド上での移動としてストーリーを進めていきます。

 

 

したがって、日常のお散歩もまるでドラクエの世界を歩いているような気分になれるのです。

 

 

今朝もラダトームの城(ゴンチャロフ製菓東京支店)で王様とおしゃべりしてきましたし、ガライの町(河野金物店)でモンスターを退治してきました。

 

 

ゲームだけにとどまらず、拡張現実は我々の日常をより便利かつ豊かにしてくれます。

 

 

 

 

 

 

ETCゲート通過って相変わらず怖いよね。

 

5月の太陽が狂い咲いたような午前中でした。

 

我々はゴルフの練習のために東京西郊の広大なゴルフ練習場へと向かっていました。

 

 

松任谷の嫁はんの「中央フリーウェイ」を歌いながら中央道をぶっ飛ばして到着したのは東京サマーランド。

 

駐車場にクルマを停めて受付の老婆にゴルフ練習場の入り口をたずねると、

「ここからだと500メートルくらい歩く」

とのこと。

 

「・・・・え?  不便すぎじゃね?」

 

同行の友人と思わず顔を見合わせましたが、何しろここは東京の西郊あきる野市。

 

東京都とは思えないほどの山の中。スーパーシティTOKIOとは程遠いローカル感。群馬と見紛うほどの山岳風景。

 

「まあ、仕方ないよね。山の中だし」

 

老婆に礼を言っておもむろに生活道路を歩き始めた我々でしたが、20分ほど歩いた地点で思わず立ち止まりました。

 

「「「「暑っ!!!!」」」」

 

この日の気温は30度を越え、道のりは太陽光をさえぎるビルひとつない蕩けそうなアスファルト。

 

炎天下をひたすら歩いてきた我々は汗と苛立ちで発狂寸前でした。

 

「もうとっくに500メートル歩いてるんじゃね?!!」

 

「待って。我々はゴルフの民。今日はゴルフ脳で会話すべきじゃないかしら」

 

「ん?」

 

「500メートルではなく今日に限っては546ヤードよ」

 

「・・・あ、はい」

 

「ちょっとキャディー(Googleマップ)に聞いてみよう」

 

覗き込んだスマホのGPSが示す”現在地点”は、ゴルフ練習場までの道のりの半分以下です。

 

「はぁ???!!」

 

「まだまだ全然じゃん!!!!」

 

「実際は3000ヤードくらいあるんじゃね?」

 

「てか、そもそもあそこはゴルフ客用の駐車場じゃなかった。ってこと?」

 

「ええ。恐らくそういうことになりますね。はい」

 

「くっそ!!あのクラブハウス(受付)のクソキャディ(ババア)!!!」

 

直射日光を散々浴びてきた我々はおもむろに踵を返し、来た道をさかのぼりました。

 

受付の老婆だった女性は、今やクソババア呼ばわりです。

 

「まじ田舎の人の距離感覚ってバグってるよね!!!」

 

「わかるわかる」

 

「でしょ?」

 

「うちの地元もちょっとの距離でもクルマ使うくせに、何故かタクシー」

 

「カートね」

 

「何故かカートには絶対に乗らないっていうわけわからん価値観が跋扈してる」

 

「要するに杓子定規なのよね」

 

「コスト意識と距離感覚を同一のモノサシで測らない的な?」

 

暑さで膨張した怒りが四方八方へ飛び散ります。

 

 

「ふんぬーっ!!!!」

 

憤怒です。

憤怒している事をそのまんまふんぬ!と叫びだすほどに、無抵抗なヒートが我々を包み込みます。

 

「アウト(往路)でフック(左曲がり)だったフェアウェイ(道路)も、イン(復路)ではスライス(右曲がり)だね」

 

ゴルフ用語の比喩にもキレがありません。

 

「ほんと毎日がエブリデーだよ」

 

もはや何も言っていないに等しい会話が続く炎天下。

 

「思わずFから始まる4文字が出そうになるよね」

 

「ああ、FACEね」

 

「鏡にうつった!あなたと二人~♫じゃねーんだよ」

 

「www」

 

「美容院で美容師さんと鏡越しに会話する時、その歌詞思い出してちょっと笑うよね」

 

「は?」

 

「だって、まさしく”鏡にうつったあなたと二人”状態じゃん」

 

「なにそれw」

 

暑さで妙なテンションに拍車がかかる我々。

 

怒りのバロメーターの限界が音階のシ~♫だとしたら、気分良く中央道を疾駆しているときはド~♪でした。

 

受付のババアに「500メートル先です」と言われたときも、まあせいぜいレ~♫くらいでした。

 

それから”自称500メートル”を歩きはじめるやいなや、ミ~ファ~ソ~ラ~♫と音階は上昇していき、いまではとっくに3オクターブ上のファ~♪のシャープです。

 

 

リストの「ラ・カンパネラ」のイントロみたいな超絶技法のオクターブまたぎ奏法です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3番アイアンと看板ないじゃんで韻踏める

 

ようやくの思いで駐車場へ戻りクルマをピックアップした我々は、クーラーの効いた車内でゆったりと腰掛けていると3000ヤード先のゴルフ練習場へはものの5分。

 

「ルァっという間じゃん」

 

暑さで滑舌がバグり、あっという間さえ言えないワタクシ。

 

「くっそ!あのババア!!何が500メートルだよ!!」

 

「座ってアクセル踏んでるだけで5分で着くというのに」

 

「往復30分は歩いたね」

 

「しかも炎天下をね」

 

「あの」

 

「ん?」

 

「プール入りたくね?」

 

「え?」

 

「奇しくもここはサマーランドだし」

 

「水着は?」

 

「ですよね~」

 

「あ~あ、なんだか無駄に回り道しちゃったね」

 

「うん。でも・・・・」

 

言いかけて、思わず口ごもりました。

 

 

思えば、回り道だらけの人生でした。

 

受験→高校→大学→就職→結婚→昇進→出産→家を買う→子供の成長・・・・

 

人生のスタンプラリーをキッチリと回りながら生きてきた人からすれば、ワタクシのようなボンクラ自営業者は人生の落伍者のようにうつっているでしょう。

 

今、ワタクシの手元に「人生」と書かれた台紙があったとしても、スタンプはせいぜい2つくらいしか押されていないのです。

 

”ババアを信じて体力と時間を浪費する程度の回り道”なんて、ブログのネタにするのが関の山。

 

ならば一思いに、3000ヤード(2キロ)歩ききってしまっても良かったかもしれない。

 

だって、

 

「・・・・その方が面白いでしょ」

 

つかの間の静けさのあと、友人は怪訝そうに笑いました。

 

「なにそれw」

 

 

 

 

 

 

エイトプリンス

 

ようやくの思いでゴルフ練習場の打席にたった我々はそこから2時間をアイアンとドライバーの練習に費やしました。

 

 

「20ヤードくらいしか飛んでないよ」

 

いくら笑われても気にしません。

 

それが仮に300ヤードをまっすぐに飛ばせたとしても、20ヤードだとしても、そんなことは二の次。

 

とにかく第一義は「ゴルフの練習をした」という過去完了形の事実がほしいだけなのです。

 

 

 

 

「あ”~~~!腹減った!!」

 

ベタベタになるまで打ち続けた我々の次の行動は満場一致で、そう、お昼ご飯です。

 

さっそく隣接の駐車場へ戻ると、炎天下に二時間駐車しておいた車内はほとんどサウジアラビア状態。

 

エンジンをかけると、うずくまっていた動物が一度ブルンと身震いするように動き出し、やがてエアコンが冷たい空気を吐き出し始めました。

 

 

16号線をゆったりとクルーズしながらランチへと向かったのは、エイトプリンスこと八王子。

 

八王子に来たのは何年ぶりでしょうか。

 

駅前の感じが地方都市っぽくて好き。なんとなくそんな印象があります。

 

満車だらけのモータープールやコインパーキングをいくつかはしごしてようやく見つけた駐車場。

 

「駐車場に運のない一日だね」

 

すぐ先の雑貨屋の軒先におしゃれな家具が並んでます。

 

こういうマスプロダクトではない商品を扱う店が駅前の一等地にひっそりとあるあたりもいかにも地方都市っぽくてお散歩に彩りを添えてくれます。

 

「まだクルマの返却時刻まで余裕あるから、ちょっとフラフラしようか」

 

休日の穏やかな午後、繁華街を行き交う人の表情もどこか温厚です。

 

「なんか、トランプが来日してるらしいね」

 

「安倍ちゃんとゴルフしたらしいね」

 

「俺らも誘ってくれてもいいのにね」

 

「ダントツで負けるよ」

 

入った回転寿司屋さんでウエストが2倍になるまで食べに食べ、ふたたび出発です。

 

 

 

「八王子インターから30分くらいでしょ」

 

「念の為カーナビに入力してみようかしら」

 

「そうだね、トランプの影響で交通規制とかあるっぽいし」

 

「本人はヘリでゴルフコースに降り立ったらしいじゃん」

 

「ホールインワンだな」

 

満腹で、冗談もキレを取り戻してきました。

 

きっとお寿司に含まれるDHAによる作用だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

右に見えるビール工場、左には競馬場

 

「歌詞と逆だ」

 

「つまりあの歌詞は、下り車線を走っている描写だったんだなww」

 

夕暮れの中央高速を、やはり「中央フリーウェイ」を熱唱しながら走らせること15分。

 

高井戸の手前で渋滞に巻き込まれました。

 

トランプが来日したせいで~♪

クルマは長い列さ~♪

どこまでも続く赤いテールランプがキレイで~♪

 

状況の変化に対応し、「中央フリーウェイ」から「ロード」へとクロスフェードさせ場末のスナックのような選曲でホットなナンバーをデリバリーしながら渋滞のストレスをごまかします。

 

 

 

暮れゆく空が好きです。

 

なんだかワクワクします。

 

これから始める絢爛たる夜を想起させ、街全体が喧騒に包まれるこのトワイライトな時間帯、インクを垂らした水面のようにゆっくりと朱に染まっていく空が筆舌に尽くしがたいほどに気持ちをチルさせてくれます。

 

かつてDVDが主流だった頃、夕暮れや夜の車載映像だけを永遠に撮り続けただけという非常にマニアックな作品を眺めながらお酒を飲むという休日の過ごし方をしていた時期があります。思えばたいへんアーバンな休日ですね。

 

とりとめのない思い出話や冗談で和やかな笑いが飽和した車内は快適で、移ろいゆく夕映えが頬を染めます。

 

なんだか、青春っぽいな。

 

20歳の頃、中古のマークⅡに乗っていたのですが、毎週のように多摩方面に住む友達を訪ねていました。

 

その頃もこうして夕闇せまる中央道をドライブしていました。

 

懐かしいな。あいつの上の子はもう中学生か。

 

不意にイノセントな体験を思い出し、不覚にも心の柔らかな部分がちょっぴりウェットになってしまいます。

 

もしかして、今日こうしてサマーランドのゴルフ練習場へ行ったこと、いつか突然思い出して感傷的になったりするのかな。

 

高速道路に這う巨大な大蛇のウロコのようにキラキラと続く渋滞のテールランプを眺めながらゆっくりと進んでいると、徐々に変わっていく空の色の物悲しさも相まってセンチメンタルがジャーニーしてきます。

 

それぞれの目まぐるしい日常にハサミを入れて、そこに非日常を貼り付けたような休日だった。

 

静岡と長野の県境みたいな風景との邂逅。

 

都心とは違うタイプの熱を帯びた路面。

 

下手くそなドライバーが打ち出したボールが転がる芝生に燦然と照りつける陽光。

 

ゆったりとした幹線道路と八王子の繁華街。

 

その帰り道の夕映えの美しさ。

 

渋滞の車内での会話と穏やかに流れる時間。

 

レンタカーを返却したら飲みに出かける。その押し殺した胸の高鳴り。

 

 

「今日、楽しかったね」

 

「どうしたの、突然」

 

「楽しかった」

 

「・・・ゴルフもっと練習しなよ」

 

 

 

 

 

 

 

朱く染まる首都高速

 

 

表示版ではトランプ来日による交通規制の情報とそれに伴う渋滞の表示で首都高の路線図は真っ赤に染まっています。

 

「この先もひどい渋滞らしいね」

 

が、料金所を抜け首都高に入ると、なぜか渋滞は緩和されました。

 

「ひゃっはー☆ ぜんぜん余裕じゃん」

 

車列は、4号線のなめらかなうねりに沿って進んでいきます。

 

軽快に進み、ものの数分で新宿のビル群が目の前に迫ってきました。

 

ポン♪・・・・700メートル先、左方向です。その先、さらに合流があります。・・・

 

「・・・なんだか久しぶりのカーナビの声を聞いたね」

 

「しばらく渋滞と直進だけだったからね」

 

しばらく押し黙っていたカーナビの機械的な声すら、久々の案内に得意げな表情を浮かべているようです。

 

ポン♪・・・・・300メートル先、左方向です。その先、さらに合流があります。・・・

  

 

ポン♪・・・・・まもなく、左方向です。その先、さらに合流があります。・・・

  

 

どうやら交通規制を考慮して西新宿ジャンクションで中央環状線に乗り換えろと指示しているようです。

 

言われるがまま、ウインカーを出してアクセルを踏み込みました。

 

大きくうねりながら中央環状線の本線へ合流すると、そこは長い長い地下トンネルです。

 

「ガラガラじゃん」

 

開通時は、世界でもっとも長い地下高速道路としてニュースでも取り上げられていた山手トンネルは、中央道の渋滞が嘘のように巨大な空間だけがひたすら続いています。

 

「イルミネーションみたい」

 

等間隔に整列した照明がビュンビュン背後に流れていくスピード感がたまらなく、思わず速度超過しそうになります。

 

 

速度メーターに気を配りながら巡航していると、ふたたび

「ポン♪」

の音に続いてカーナビが言いました。

 

ポン♪・・・・目的地周辺です。案内を終了します。お疲れ様でした。・・・

 

 

ぇっぇええぇぇぇぇええぇえぇっっ!!!!!

(´゚д゚`)

 

 

地下ですやん!!!

首都高ですやん!!!

たしかにこの真上が中野坂上かもしれんけど!!!!

停まれませんやん!!!

地上、上がれませんやん!!!

 

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「ねえ、次の出口ってどこなの??」

 

「西池袋。たしか椎名町のあたり」

 

「・・・そう。・・・ごめんね」

 

「何が?」

 

「あたしがカーナビ入れようって言ったばっかりに」

 

「でも・・・・」

 

そこまで言って思わず口ごもりました。

 

たしかにカーナビの案内さえなければ西新宿ジャンクションを通過して新宿出口で降りるつもりでした。

 

夕景と会話に夢中で、深く考えていなかったのもあります。

 

正直、中央環状線の外回りの出口の箇所に疑問が浮かばなかったわけではありません。

 

違和感を感じながらも、カーナビの声に促されるまま運転操作をしていたのです。

 

トランプ来日による交通規制も、判断を誤らせた遠因です。

 

誰も悪くありません。

 

そう、カーナビも同乗者も。

 

どうせならそんな失敗も笑い話にして、また近日ゴルフの練習行けばいいじゃん。

 

今度はもっと大勢で大きなクルマ借りてさ。

 

だって、

 

「・・・・・その方が面白いでしょ」

 

つかの間の静けさの後、友人は少しだけ申し訳なさそうに笑いました。

 

「なにそれwww」

 

 

 

 

カーナビという拡張現実を信用しすぎた我々は、レンタカーの返却時刻に間に合わなかったことは、言うまでもありません。

 


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