春よこい

食べログ グルメブログランキング


春。

それは出会いと別れの季節です。

 

 

あるお客さんが遠くに引っ越してしまい、なんだか寂しい思いがある反面、大学生だったお客さんが春から新社会人になったりします。

中にはパスポートとまとまったお金が無くては行き来できないほど遠くへ栄転された方もいて寂しさ半分嬉しさ半分だったり、

一方できっと当店を気に入って懇意にしてくださるお客さんもまたいるのだろうと新たな出会いに期待を弾ませたりします。

 

 

あらゆる人には自分のストーリがあって、各々が毎日物語を少しずつ書き進めながら生きているのだと実感したりしております。

 

 

あるお客さんは中古マンションを販売するお仕事に転職されました。

初月から契約を取れて嬉しいなんて報告に来てくださったので、ぼくも思わず中古マンションが欲しくなったりしております。

いつか中古マンションを買う為に、とりあえずランチタイムの営業をはじめようかと本気で考え、実際にメニューの考案段階に入っていたりします。てへへ。

 

 

いつかまとまったお金ができたら先述のお客さんにマンションの売買仲介をお願いしようと思ってます。

 

 

そうです。

 

春は、新しいステップを踏み出す季節なのです。

 

 

 

とはいえ、マンションなんて一朝一夕で購入できるものではありません。

 

 

 

 

「う〜ん。(´・ω・`)」

 

 

 

春らしく、新しい自分に出会える手段を探していたぼくは、不意に思いつきました。

 

 

 

 

「そうだ。ジム行こう」

 

 

 

 

JR東海のキャッチコピーさながら、頭によぎったのは常連のトレーニングコーチの方でした。

 

パーソナルトレーナーとして活動するかたわらスポーツチームのトレーニングコーチをやったりブロガーでもあり読書家でもあり父親でもありながら当店の近所のジムの従業員でもある彼ならなんでも相談できます。

 

 

へっ!!!

美容院に行くのすら数ヶ月悩むのんびり野郎がジムなんて。

どーせまた自意識モードが発動してテンパるだけだろ。

 

意識も志も低いやつに継続的な運動なんて無理無理無理。

 

 

 

 

このブログを読んでるっぽい400人くらいの方はそう笑うでしょう。

 

 

しかし読者諸兄。

 

 

 

一方でぼくが昨年末からすっかりオードリー春日に憧れていることをお忘れではないだろうか。

 

 

そう。

 

私は春日のようにバッキバキの肉体を手に入れて、春日のコスプレをしたいのです。

 

(いや、本来は春日のように「揺るぎない自己肯定感をもった男」になりたいんですが、とにかくカタチから入るタチのぼくは、春日のギアをまとって、ガワだけでも春日になってみたいのです。)

 

 

 

また、ぼく的データでは筋トレができる人間は人格者が多いです。

 

筋トレに限らず、学習や事業や創作など継続的な努力を必要とする事柄を成し遂げる人間には、相応の人格が備わっている場合が多いです。

 

馬鹿、ハゲ、チビ、ゲス、不細工、自己中、自意識過剰、豆腐メンタル、と「クズの数え役満」のぼくには学習や事業や創作などは到底無理。

 

 

でも、筋トレだけなら可能ではないだろうか。

 

だって正常に動かせる程度の肉体はあるのだから!

 

 

 

そう。

 

「明日から変わる」と言い続けて34年。

 

 

 

この春、オレは変わる!!!

 

 

今度こそ変わってみせる。

 

 

 

 

 

そして朝に起きる生活をして、ランチタイム営業をはじめて、無駄遣いをやめて、いつかマンションを買う。中古の。

 

 

まずはその最初のステップの「ジム通い」をこの春、踏み出すんだ!(`・ω・´)シャキーン

 

 

 


 

4月1日。

 

さくら舞い散るエイプリルフールの真っ昼間、ぼくはエニタイムフィットネス中野坂上中央店さまへと入会手続きに参じました。

 

豪奢なビルの1階、ガラスの向こうで汗を流すムキムキの黒人さんが見えます。

 

そうだ。オレもあの人くらいバッキバキになるんだ。ブルックリンの下町でギャングの抗争に巻き込まれても動じないくらいの筋肉を手に入れるのだ!

 

 

 

 

いざ、行かんっ!!!

 

エイッっと気合いを入れてドアを押すと、

 

 

 

 

・・・・ガチャッ・・・・

 

 

 

 

開きません。

 

 

 

 

あれれ〜? おかしいぞ〜?

 

ぼくの中の江戸川コナンくんが密室の予感を示唆します。

 

 

 

 

もう一度、今度は取っ手を引いてみると、

 

 

 

 

・・・・ガチャッ・・・・

 

 

 

 

 

やはり、開きません。

 

 

 

 

「あれれ〜?」

 

 

 

 

 

 

よく読むと、「せやかて工藤、セキュリティ的なアレがアレやさかいにインターホンでスタッフを呼んでくれへんか」という意味の説明が。

 

 

 

なんだかとてもしっかりしてるんだなぁ。

 

 

 

妙に感心しながらインターホンのボタンを押すと中からセキュリティを解除してくれたのは先述のトレーニングコーチ。

 

挨拶もそこそこに諸々の手続きやマシンの説明をしてくれますが、襟付きのシャツを着ている自分がいかにも場違いでなんとも面映い。

 

 

 

「。。。。オレ、浮いてるな。フワッフワに浮かんでるなぁ」

 

 

 

美容院デビューの時もそうでしたが、どうやらぼくは自分の容姿や服装がその空間に調和していない時に妙な自意識モードが発動するようです。(´・ω・`)

 

 

 

「オレ、一滴も汗かかなそうな服装だなぁ、靴もスウェードだし」

 

 

しかし、ぼくは春から変わったのだ。

 

もはや昨日までの自分ではない。

 

深い宵の闇から明けた燦然たる朝の陽の光さながら、今日から新しい人生が始まったんだ!(`・ω・´)パンパカパーン!

 

 

 

暴走しそうになる自意識を抑えながら入会手続きを終えたぼくは、その足で新宿へ向かいました。

 

 

 

そうです。

 

 

 

ジムという爽やかな空間に似合うトレーニングウェアを探すのです。

 

 

 

なにごともカタチから入る。それが成功への近道です。

 

 

実力はあとからついてきます。

 

 

 

まずは、いつかムキムキになるはずの肉体を収納するウェア、つまり入れ物を先に用意するのです。

 

 

 

そこに升があれば日本酒を注ぐように、そこにトレーニングウェアがあればその内側の肉体も自然とムキムキになってくるに違いありません。

 

 

 

健全な精神は健全な肉体に宿るように、かっこいい筋肉はかっこいいウェアをまとっているべきですから。

 

 

 

銀ちゃんのブログにもおすすめのウェアを紹介する記事があるので、参考にしながら歩き回ること1店舗、2店舗、3店舗。

 

 


 

 

 

「ふぅ〜。お腹が空いたなぁ」

「おや、奇遇にもあそこに蕎麦屋さんが」

「あろうことかワシ、蕎麦が大好物ですねん」

「ウェア探しの途中だけど、ここはいっちょ休憩がてらうまいお蕎麦とお酒に舌鼓を打ってこまそうやないかい」

 

 

吸い込まれるように入った蕎麦屋さんの窓から見下ろす風景が綺麗だったので思わず日本酒を大きいサイズで注文し、すっかり本来の目的を忘れかけるぼく。

 

 

「うましっ!」

 

 

コシのあるさくら切り粉蕎麦を手繰りつつ山菜の天ぷらを頬張りながら、身も蓋もない結論とあくびがこぼれました。

 

 

「ふぁ〜ぁ、色々探してみたけど、結局、やっぱり好きなブランドのものがイイな♪」

 

 

という訳で、日本酒で頬を染めたまま向かった先はアディダスショップ新宿。

 

 

Tシャツにパンツにシューズまで、上から下まで決めてるアディダス状態のウェアを一式ゲッツして、ご満悦で帰宅。

そのままジムへは行かずに就寝。

 

 

 

入会手続きを完了したことですっかり筋トレをしたような気分になってしまっていると気付いたのは、それから3日後のことでした。

 

 

 

「おいっ!春から変わったはずじゃないか!」

自分を叱咤し、重いケツを蹴り上げてアディダスに着替えドアを勢いよく飛び出しました。

 

人が沢山いると恥ずかしいので、ひと気の少なそうな深夜の3時をトレーニングタイムにしたまでは良かったのですが、この時間に薄手のウェアは、かなり寒い(; ̄Д ̄)

 

 

ジムまでの100メートルの間に何度も心が折れそうになります。

 

「やっぱりトレーニングは明日からにしようかな。。。」

 

三つ子の魂百まで。とはよく言ったものです。

 

怠け者の深い業を背負って生まれついてしまったぼくは、筋トレはおろか、筋トレをする場所に向かう外気の冷たさに怖気付いてしまうのです。

 

 

「あんたさあ、生涯逃げてばっかりじゃん」

 

ぼくの脳内でマセラティのエンブレムみたいになった三又のモリを持った魔女が言います。

 

「とりあえず踏み出しなよ、はじめの一歩」

 

ぐぬぬぬ。。。

 

今夜に限ってはこれまで魔女と対峙してきた天使は出現しません。

自分でも解ってます。

魔女の姿勢が正しいってこと。

せっかく入会したんだし、夏の自分に自信を持たせてあげたい。

ならば、やるしかないだろ筋トレをさ。

他でもない自分で決めたことだろ。

いつやるんだよ。

 

 

「。。。。今、でしょ?。。。」

 

 

 

寒さに震えたどり着いたジムのセキュリティロックを開けて入店し、荷物を置きます。

ここまではカンペキ。

 

 

 

問題はここからです。

 

そう。

 

ぼくはほかのお客さんに筋トレ素人だと思われたくないのです( 。´◕ω◕)

 

あたかも「慣れてます、筋トレ」みたいな顔でマシンの前に仁王立ちします。

 

 

 

。。。、はて?

 

 

これはどういう姿勢で跨るものなのかな??

 

 

いいえ。

 

 

悩んだら負けです。

 

 

躊躇なく、それでいて自然な感じで椅子っぽい形状の部分に腰掛けます。

 

 

 

 

この位置からならマシンの使い方が説明書きしてあるイラストが読めます。

 

読めますが、読んでいるとバレないように読まなくてはぼくが「筋トレ素人」だと悟られてしまいます。

 

 

 

「。。。。ふぅ〜。。。。」

 

 

 

まだ疲れてもないのに、息を吐き出して呼吸を整えるフリをしながら右斜め上のイラストと説明書きを視界のすみにしっかりと捉えつつ、椅子の高さをなおすフリをして時間稼ぎ。

 

 

ふむふむ、肩の高さにアームがくるように、と。

 

 

アームの高さやウエイトの重さを調整しつつ、利用方法を把握して、無駄にイヤホンを付け直して、ついでにBGMを選曲しているフリをし、定位置に構え、えいやーっと腕に力を入れて押し出、、、、、せません。

 

 

 

おっも!!

 

 

 

 

。。。こんなの無理だよ。。。まずは5キロだな。。。。

 

 

 

33キロは、築地市場を豊洲市場の位置まで腕力で押し出せるレベルの怪力じゃなきゃ無理だな、うん。

 

 

空気清浄器を右から左に運ぶくらいしか力のないぼくは、5キロからはじめることにしました。

 

 

フンヌッ!フンヌッ!

 

 

5キロでも、押し出すたびに鼻息が漏れてしまいます。

 

 

鼻息荒いシマウマにでもなったようにビシバシとアームを押し出すと、徐々に胸筋が悲鳴をあげたしました。

 

しかし、ここでやめたら負けだ!

 

熱い炎の中で何度も叩かれて鍛造される日本刀のように、胸筋に負荷をかけて鍛えるのだ。

 

そう、ぼくは気づいてしまいました。

 

肉体作りとは、もはや伝統工芸だ。きっとそうに違いない。

 

筋トレとは、言わば鍛刀なのです。

 

そう考えると、美しい肉体とヤイバはよく似てませんか。

 

そうだ。きっとそうなんだ。

 

ぼくらは単なる 「トレーニングするおじさん」なんかじゃない!

 

伝統工芸士であり刀鍛冶なんだ!

 

 

そう思えば、筋トレなんてちっともツラくありません。

 

30分ほど「フンヌッ!」を繰り返しドリンクを買おうと自販機へ向かうと、不意に店の奥にある日焼けマシーンの個室が目につきました。

 

 

 

「あんた、いつ焼くの?」

 

 

 

魔女の言葉に好奇心が跳ね上がります。

 

 

「今でしょ!!!!」

 

 

 

 

個室に鍵をかけて全裸になり500円玉を投入すると、マシーンがおもむろに風を出しながら動き出します。

 

 

寒冷地の冬の朝にあらかじめエンジンを温めておく自動車をみたいな感じだなぁ。

 

 

ぼんやりと妙な郷愁に思いを馳せていると、マシーンの紫外線を発する蛍光管が100億ルクスぐらいで光りだしたので慌てて中に入ってみました。

 

 

 

が!!!!

 

 

 

ドアを閉めた途端に大きな問題が発生しました!!!

 

 

 

 

 

 

「。。。。。。うううううう。こ、こ、こ、怖い。。。。。」

 

 

 

 

 

そうです。

 

 

ぼくはかつてCTスキャンで絶叫したほどの閉所恐怖症なのです(´・ω・`)

 

 

 

立ったまま白々と発光する蛍光管が周囲360度をぐるりと囲む空間は、

 

 

 

 

 

 

 

怖い!!!!

 

 

 

 

500円で7分間日焼けできるマシーンなのですが、最初の4分くらいずーーーーっと小さな声で

 

 

 

 

「わわ、わわ、わわ」

 

 

 

とテンパってました。

 

 

 

日焼けマシーンの中でテンパる客はなかなかいないんじゃないだろうか。

 

 

日焼けマシーンにも関わらず、恐怖のあまり顔面蒼白です。

 

 

しかしせっかく500円支払ったのだから7分を充分に謳歌したい。

 

 

妙な吝嗇根性が働いてしまい、コンガリというよりゲッソリです(*_*)

 

 

 

空白の7分間に耐えてマシーンがクールダウンしだすと、妙にテンションが上がってきます。

 

 

 

ひゃっは~☆

 

 

 

「さて、今日もがんばったぞ♡」

 

 

 

ちっともパンプアップしていないけれど、なんとなく美しい肉体を手に入れたような多幸感でフラフラしながらジムを後にしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道。

 

 

来た時ほどの肌寒さはありません。

 

 

なんとなく「やった」という過去完了形の事実が、充足感をもたらします。

 

 

「よし! 春だ! がんばるぞ!」

 

 

柄にもなくポジティブな気分に全身を支配されている自分をほんのりと認識しながら、ぼくはおもむろに空を見上げました。

 

 

ひらりと舞い落ちる桜の花びらが、さながらぼくをパチパチと祝福してくれているようです。

 

 

黎明の中野坂上が、これまでとは違った風景に思えました。

 

 

春ですね。