春日コスプレーション

 

去年の暮れでした。

 

 

それは恋のようにゆっくりと確実に熱を帯びていきました。

 

 

胸の中の赤い実が徐々に膨らんでやがて弾けるように、

 

 

「あ、なんだか気になる」

 

「ついつい見てしまう」

 

「もう、見ずにはいられない」

 

「もはや、好きだな」

 

と気付いたら、この一ヶ月でぼくは

 

 

オードリー春日のファン

 

 

になっていました。

 

 

抑えられないこの衝動。

 

自宅ではYouTubeで春日の動画を漁る毎日。

 

春日のことが気になって、頭から離れない。

 

 

春日。

 

それは魅力の宝庫です。

 

鍛え上げられた筋肉に、物怖じしない図太さ。

 

自分が春日であることを全力で肯定し、

 

常に春日の「正解」を出し続けている男。

 

「トゥースっ!!」と産声をあげながら産まれ、その瞬間から「春日」だった男。

 

富裕層でありながら家賃39000円の「むつみ荘」に住み続けるストイックさ、

 

芸人のみならずボディビルダー、フィンスイマー、エアロビクサーでもあり、

 

所沢観光大使にも就任し、東大受験もし、38歳にして毎日自慰行為による「自分磨き」を欠かさない男。

 

世界唯一の「春日語」の話者(ネイティブ)であり、「杉並区むつみ荘」と非常にざっくりした宛先で年賀状が届くほど日本中の郵便局員にも周知された存在。

 

ドッキリ企画で「少しここで待機していて下さい」とロケバスに放置されても黙って6時間待ち続け、節約企画では飲食店のダクトから吹き出る匂いをオカズにちぎった食パンのミミを食べる男。

 

 

そう。

 

春日以外には「春日」は務まらない、唯一無二の存在。

 

いや、もはや春日とは、存在ではなく「概念」なのである。

 

 

どうですか、みなさま。

 

みなさまも俄然「春日」が好きになってきませんか。

 

大江戸線の「飯田橋、春日方面行き」の案内にさえトキメキを感じませんか?

 

 

2017年、ふゆ。

 

「春日」というドラッグに手を出してしまったぼくは、もう春日ナシでは生きられない体になってしまったのです。

 

 



 

春日ほどのスターは他にはいません。

いたとして、せいぜい矢沢永吉くらいでしょう。

 

 

思えば、スーパースター春日とスーパースター矢沢には奇妙な共通点がいくつかあります。

 

 

たとえば登場シーン。

 

 

「はい、どーもー」と中央のマイクに駆け寄る相方を尻目に、タイヤルアップ回線くらいの速度で胸を張って登場する春日。

 

おもむろに発する

 

「みなさん、本物の春日ですよ!」

 

の決め台詞。

 

 

そう。

 

春日こそがまさしく「本物の春日」なのです。春日以外春日じゃないの。

 

 

なんて素敵なのでしょうか。

 

 

まさしくスーパースター春日に相応しい登場シーン。

 

一方の矢沢も負けてません。

 

 

 

コンサート開演時刻、暗転の中で突如流れ出すイントロ。

 

しかしステージのセンターにはマイクスタンドのみ。

 

と思ったら、しばらくして楽屋からステージのソデへゆっくりと歩きながら登場する矢沢。

 

イントロが流れるなか、余裕の表情でステージ中央に到着、イントロの終わりと同時にステージが明転。ぴったりオンタイムでいきなりAメロから歌いだす矢沢。

 

見事な「焦らし演出」です。

 

矢沢の登場を今か今かと待っていたオーディエンスは大盛り上がりです。

 

 

また、奇しくも双方の一人称は自分の苗字です。

 

その上、共に名言が絶えないのもスーパースターの証を言えます。

 

「お前の一生、YAZAWAの2秒」

「オレは構わないけど、YAZAWAはなんて言うかな」

「未来の春日を喜ばせたい」

「全員がiPhoneだと思うなよ」

 

春日のほうがやや小粒ですが、スーパースターにかわりはありません。

 

 

 

そうです。

 

我々が敬愛する「春日」とは、矢沢に匹敵するレベルのスターなのです(*´∀`*)!!!

 

 



 

 

とはいえ、です。

 

ぼくも春日も30代のおじさんです。

 

おじさんがおじさんのファンになる。

 

それは時として奇妙な現象を生みます。

 

 

 

例えば矢沢の場合。

 

矢沢のファンは、みんな、矢沢になりたいのです。

 

矢沢の東京ドーム公演の際には、水道橋駅へ向かう電車の車内は矢沢のコスプレをしたおじさんで溢れかえります。

 

しかもこの仮装、妙に完成度が高く、スタンドマイクまで自前で用意するのです。

 

ご存知、矢沢永吉のマイクスタンドの色は白です。いわゆるYAZAWAモデルです。

 

それくらい、矢沢にとって重要なアイテムであるマイクスタンドを、ファンが軽視するはずありません。

 

したがって、矢沢の東京ドーム公演の日の総武線の車内では矢沢のコスプレをしたおじさんたちが吊り革ではなく自前で持ち込んだの白いマイクスタンドに手をのせて車体の揺れに耐えているのです。

 

想像してみて下さい。

 

電車内でマイクスタンドに手をかけて揺れている矢沢コスおじさんの大群を。

 

まさしくTHE・不思議の国JAPANです。

 

それほどまでに矢沢のファンは、矢沢になりたいのです。

 

それこそ熱狂的なファンなのです!

 

 

 

 

 

さように、おじさんがおじさんのファンになると、

 

「なりたい」

 

というのは感情はどうしても避けられないものなのです。

 

 

 

 

 

ここで満を持して、はっきりと申しましょう。

 

 

そうです。

 

 

 

ぼくも、オードリー春日のコスプレをしたいんです!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、窓の外は胸を締め付けられる冬の空。

 

ピチピチの白いズボンにピンクのベストという春日ルックはあまりに寒い。

 

 

そう。

 

春の日と書いて「春日」です。

 

 

重くどぐろを巻く雲がのしかかる寒空の下、なかば春日のコスプレを諦めて冬を過ごしていました。

「まだ春日の季節じゃないもん(´・ω・`)」

 

 



 

 

そんな矢先、まさかの急展開!

 

さっそく訪れたコスプレチャーンス!!!

 

 

 

当店主催の定額呑み放題食べ放題企画「クリスマスビンゴ大会」のチラシに過去の自分が書いた一文が目に止まりました。

 

 

 

「仮装にて参加の方は割引きを検討を検討中♡」

 

 

盛大に誤字ってます。(ノ∀`)

 

 

 

 

ともあれ、この企画では多くのお客様が仮装で(!)ご来店なさる。はず。

 

であれば、店員であるぼくが春日の仮装をしていても違和感は皆無。

 

目には目を、仮装の客には仮装の店員を。

 

 

 

 

ハンムラビ法典に則って、ぼくはビンゴ大会当日「春日」のコスプレで接客しようとくわだてたのでした。

 

 

 

 

想像してみて下さい。

 

漫才の登場の時の春日ようにゆっくりとパンパンに胸を張りまくってドリンクを運ぶぼくを。

 

ピチピチの白いズボン、パステルピンクのベスト。

 

8:2に分けたテクノカット。

 

「トゥース! 待たせたね。こちらは、あの春日が注いだ生ビールですよ」

 

 

盛り上がるサンタやトナカイのコスプレをしたオーディエンス(お客さん)。

 

 

 

うん、最&高です(*´ω`*)

 

 

やるしかない、春日コスを(・∀・)

 

 

思えば、これまで冷笑していた「矢沢永吉のコスプレをするおじさん」の気持ちがぼくの中で芽生えた瞬間でした。

 

 



 

ビンゴ大会前日の深夜、ぼくは散歩のついでに激安の殿堂へと足を伸ばしました。

 

ワクテカでたどり着いた激安の殿堂。狭い通路の両サイドにそびえる商品。

 

混沌に満ちた空間はさながら重慶大厦や九龍城のようです。

 

この雑多な商品群の中から、春日っぽいズボンと春日っぽいベストを調達しなければなりません。

 

ダンジョンの中をエスカレーターで攻略しながら衣類コーナーにたどり着いた頃にはトキメク心とは裏腹に体が重い。

 

 

 

その上、探せど探せど春日っぽいピンクのベストが見つかりません。(´・ω・`)

 

 

 

 

 

ぐぬぬ。。。

 

 

 

 

 

スタッフさんに訊いてみようかなぁ。

 

 

 

 

 

しかし、です。

 

よく考えたらそれは大変危険です。

 

 

 

 

 

 

「ピチピチのピンクのベストありますか??」

 

 

尋ねられたスタッフさんはきっとこう思うに違いない。

 

 

ベスト? ああ。ラルフローレンとかのね。女子高生がシャツの上に着るやつね。

ピンク? 女子高生っていうよりチアガールっぽい色ね。

ピチピチ? 体の輪郭がわかるほど小さいサイズの?

ってゆーか、このおじさんがそれ着るの??

なにそれ?変態?

 

 

 

 

そうです。

 

 

 

 

ピンクベストを探しているなんてバレたら、大変です!

 

 

”深夜に女装グッズを物色している変態”の烙印は避けられません。

 

 

ぼくはあくまで春日になりたいだけなのに、いわれのない変態のレッテルを貼られてしまいます。

 

 

 

 

やむを得ん。自力で探すか。。。。。(´・ω・`)

 

 

 

しかし探せど探せど見つからない春日のコスチューム。激安の殿堂の内部を行き来しながら、くまなく徘徊すること一時間。

 

アダルトコーナーの中、紳士服の棚、プロテインの隣、向かいのホーム、路地裏の窓、こんなとこにあるはずもないのに。

 

 

 

 

そして、ひとつの結論にたどり着きました。

 

資本主義下の大半のものを販売しているはずの激安の殿堂でさえ、あのスター春日の衣装には手が届かないのだ。(゚∀゚)

 

 

 

 

 

うーん、残念(´;ω;`)

 

 

断腸の思いで「春日」を諦め、家路についたのでした。

 

月明かりが、春日の行きつけの中野のキャバクラ「コサージュ」の看板を照らしていました。

 

 

 

 

 

 

結局春日の衣装が手に入らないまま迎えたビンゴ大会当日。

 

 

ビンゴはモリモリに大盛り上がりでした。

 

 

微熱感に満ちた空間は非日常的で、店外に溢れんばかりにあふれる笑顔。

 

 

 

こういう類のレジャーと言っていいのかもしれないなぁ。(*^^*)

 

なんだか、自分の仕事に、またひとつ角度の違う視点と気付きがありました。

 

 

店内のテレビで放映するYouTube。大きめの音量で鳴り響くクリスマスソング。それらをかき消すほどの笑い声はまるで無数の打楽器を打ち鳴らしたようです。

 

グイグイ空いていくジョッキ。回るビンゴ。飛び交う景品と即席ではじまる景品交換会。

 

 

あんこう鍋、カニ鍋、PIZZA。

 

ふだんは提供していない料理が並ぶ食卓を囲む、肌色の多いコスチュームに身を包んだお客さん。

 

 

美男、美女、サンタクロース、サラリーマン風、肩出しサンタ、ケツ出しバニーガール。そして馬。

 

 

ワイセツなコスチュームに身を包んだお客さんに商品を提供する普段着のぼく。

 

 

 

異様な光景に、店の前を通る通行人が店内に手を振ります。

 

きっと風俗店だと思われてるに違いありません(・∀・)

 

 

 

もしぼくが「春日」のコスチュームを着ていたら、より風俗感が強まっていたかも知れない。(´・ω・`)

 

 

 

あっぶねー。

 

あやうく中野坂上のセックスシンボルになってしまうところでした。(*´∀`)

 

心のどこかで「春日」のコスプレができなかった悔悟を残したまま、歓喜と狂乱の夜はゆっくりとふけていきました。

 

 

 

 



 

翌朝。

 

 

 

 

1トンくらいある重たい頭を持ち上げて洗面台で歯を磨いていると、鏡に映るのは体調不良の冴えない顔。

 

 

 

 

なんだかオレ、春日っつーより、若林だな。

 

 

 

体調が悪いと、思考が妙に思弁的になっていきます。

 

 

 

チビで卑屈で理屈っぽいネガティブ野郎。

 

 

 

よく考えたら、中身も容姿もむしろ若林っぽいよなぁ。

 

 

 

おまえは春日じゃねーよ。

 

 

 

 

だぶんオレを知ってるヤツ、みんなそう言うだろうね。

 

 

 

 

あー、そうだった。

 

 

 

 

そもそもぼくには春日のようなスターの素質なんてなかった。

 

 

 

 

 

体調不良の表情でぼんやりとしている鏡の中の自分の致命的な欠点に気付いたのが、一晩遅かった。

 

 

 

 

 

そう。

 

 

 

 

オレ、ぜんっぜん春日っぽくなかった!!!!!

 

 

 

 

むしろ色々ドンピシャで若林だった。

 

 

 

 

 

 

 

ショックでした。

 

まさに青天の霹靂と言っていいでしょう。

 

 

考えてみれば、人間には産まれ持った「素質」ってやつがあります。

 

 

 

 

春日になりたくてもなれないぼくみたいな人がいる一方で、穏やかに暮らしたいのにスター性を持って産まれてしまった人もいるのです。

 

「お姉ちゃんが勝手にオーディションに応募」してもスターになってしまう人もいれば、自発的に挑戦するコトがことごとく成果に結びつかない人間もいます。

 

 

 

 

そうなのです。

 

 

 

どう生きたって、業には抗えないのです。

 

 

 

あの夜以来、ぼくは出会う人を「春日タイプ」と「若林タイプ」に別けるようにしています。

 

 

そう念頭に置きつつ観察すると、産まれながらにスター性を備えた「春日タイプ」の人って、いるんですよねぇ~(*´∀`*)

 

 

 

 

 

ちなみに、当店の常連さんも「春日タイプ」の方が多いように感じます。

 

 

 

 

 

でも。

 

 

どんな人と出会っても、オードリーの漫才のオチみたいに

 

「エヘヘヘ~ッ」

 

て笑えたら良いですよね。

 

 

 

 

遅くなりましたが、ビンゴ大会ありがとうございました!!!!

 

 

 

 

 

 

 

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