くちばしにゼニ【実録☆開業日記10】





 

不動産の契約が完了し鍵を受け取った翌日、ぼくはかつてスナックだったこの空間に残されている残置備品を確認しました。

グラスや皿などの残置品があれば経費削減のために使い回すという手段も除外するべきではありません。

 

使いまわせそうなモノだけを残し、他は解体して産廃として処分することになります。

「捨ててはいけないもの」をまとめ、あとは工事が始まったら業者さんに任せればOK。

すんなりと工期にはいった。

 

はずでした。。。。。

 

 

 

 

出店場所が確定すると、現地の内装工事と並行してやるべきことが怒涛のように襲ってきます。

 

 

まずは税務関係です。

個人事業の開業届と青色申告の届けを所轄の税務署に提出します。

 

しかしただ提出するのではなく、戦略的に開業日を設定する必要があります。

 

例えばぼくの場合は、2月1日を開業日としました。

したがって、前日の1月31日までに使ったお金は「開業費」に仕訳され、開業日以降に使ったお金は「仕入れ」「備品」「消耗品費」に仕訳されます。

 

 

「開業費」任意の年数で減価償却できるので、1月31日までにできるだけ支払いを済ませておきたいという「節税根性」がムクムクと育ってきます。

 

 

ネットや書籍から個人レベルでできる節税を勉強しながら、さらに取引先の選定もすすめなくてはなりません。

 

 

ふぅ。タスクが押し寄せるze( ̄- ̄;)

 

 

 

 

まだ新中野の物件に申し込みをした頃でした。

 

飲食店と業者をマッチングするサイトを通じて知り合ったのが現在取引をしている酒屋さんの担当のWさんでした。

 

 

その後、新中野の物件を借りられず路頭に迷っていた頃も、Wさんは頻繁に連絡をくれては「なんでも相談して下さい」とおっしゃって頂いたりとなにかと心強い人でした。

 

 

やがて中野坂上の物件を借りたぼくは真っ先にWさんに連絡し、ぼくとWさんの会社との取引は始まりました。

 

 

 

しかし酒屋だけでは居酒屋の営業はままなりません

酒屋、食材卸、肉、鮮魚、野菜、おしぼり、玄関マットやモップのリース、カラオケ業者、有線放送業者、木炭業者、産廃処理業者。

 

 

 

とりあえず数を撃つナンパ師のように、ぼくはあらゆる種類の業者さんとコンタクトを取りました。

 

これらはすべてWさんコネで仲介して頂いた方々でした。

 

そういったネットワークを持っているという点も、人的リソースを大切にする人達という印象があり、コミュ障のぼくにはなんだかとても心強い安心感を与えました。

 

 

これから開業をお考えの方は、Wさんに相談してみてはいかがでしょうか。

紹介しますよ。

 

 

 

 

さて、

その日も、ぼくは業者さんと打ち合わせを終え、改装工事が始まったばかりの現場へと直行しました。

 

 

 

が!!!!

 

 

 

 

さっそく問題が発生したのです。

 

 

 

 

前職場の常連で電気工事士のKさんが、この現場の監督であるにも関わらず、現場へ来ません。

 

 

ぼくが打ち合わせを終えて現場へ行くと、そこには大工さん大工さんが所属する工務店の社長さんだけ。だけ。だけ。

 

「工事初日だから、現場を見ておこうと思ってね。よろしくお願いしますね」

高齢ながらも好々爺といった感じの社長さんも廃棄する木材などをまとめる作業を手伝ってくれています。

 

 

「Kさんはいらっしゃらないんですか??」

 

「・・・・知らないよ。いつもこんな感じだから」

 

・・・え??

不機嫌な大工さんに恐る恐る訊ねます。

 

「Kさんが運転して産廃処理場まで運ぶんですよね、このゴミ」

「・・・・知らない」

「工程表ではどうなってます??」

「ないよ」

「は?」

「Kさんは工程表なんて作らない。仕事しない人だから」

「管理組合に工程表と図面を提出しないと」

「知らないよ」

「Kさんが監督ですよね」

「そうだけど、仕事しない監督だから。みんなKとは仕事したくないんだから」

 

 

「とりあえずK氏に電話してみたらどうだね??」

不穏なぼくと大工さんの間を縫う社長に促されて、ぼくは殺伐とした気分で携帯電話を握りしめました。

 

 

 

「あの、恐縮ですが、いま、どちらですか???」

 

 

自分でも情けなくなります。

 

どうして施主のぼくが気を使わなきゃならないのだろう。

 

それも現場に出勤すらせずに大工さんに任せっきりの監督に、だ。

 

「うん、今そっち向かってるとこ」

 

 

質問の答えになってないじゃねーか。

 

要するにこうだろう。

 

今は家でくつろいでるけど、現場まで歩いても10分だからなんならこれから向かうけど要件は何だ?と。

 

 

 

「Kさん、来ないんですか。解体おわってるみたいですけど」

 

「うん、これから向かう」

 

「・・・・わかりました」

 

 

 

これから来るそうです。

じゃあ到着までしばらく休憩だ。

すると大工さんが人数分の缶コーヒーを買ってきてくれました。

 

 

 

この後も工事期間中、Kさんは基本的に現場へ来ません。

山下達郎の「クリスマスイヴ」よりも明白に「きっとキミは来ない」と断言できるほどに、とにかく来ません。

 

ロンリ~ナ~イ♪ 興味~な~い♪

 

 

 

お陰で最終的に、造作は完成しているのに電気関連だけが何も手を付けていない事態に陥ります。

 

冷蔵庫は手配したのに、必要な箇所にコンセントが無い

 

はぁ。。。。( ´Д`)=3

 

 

照明が無いので、店舗内の灯りの具合が判断できない。(厨房が暗すぎると保健所は営業許可を下ろしません。したがって保健所の職員さんの現地視察の日程がどんどん後ろ倒しにズレ込んでいきます)

 

はぁ。。。。( ´Д`)=3

 

 

ウォシュレットがない。(なぜかぼくが自費で車を借りてでホームセンターにウォシュレットを買いに行く)

 

はぁ。。。。( ´Д`)=3

 

 

結局、照明器具ももぼくが自費で手配する。

 

はぁ。。。。( ´Д`)=3

 

 

管理組合から請求されている工程表が作れないのでぼくがたたき台のエクセルを作る。

 

はぁ。。。。( ´Д`)=3

 

 

保健所から営業許可を貰いにいきたいのに図面がない。

保健所の営業許可申請には、「食品衛生責任者手帳」「営業施設の概要」、そして「営業施設の平面図」が必要です。平面図は建築図面ではないので手書きでも問題はありません。

ぼくは自分で三角スケールを使ってレポートパッドに図面を描き、ソレを持参しました。

なぜそんな慣れない面倒な作業をしたかと言えば、もちろんKさんは図面が引けないからです。

 

はぁ。。。。( ´Д`)=3

 

ことほど左様に、Kさんの無能っぷりは枚挙に暇がありません。

 

 

 

 

そうです。

 

 

とにかくKさんはそれくらい「なにもない存在」なのです。

 

 

森進一は名曲「襟裳岬」のなかで「えりぃ~もの~春ぅは~、なにも~ない~春ですぅ~♪」破裂寸前の顔で歌っていましたが、ぼくらにとってはKさんはマジで「なにもない男ですぅ~♪」

 

 

 

なにもない男、仕事ができない男。

 

それだけならどこの職場にもいる厄介者で済むのですが、Kさんの場合、さらに大きな問題がありました。。。。。。

 

 

 

 

 

「テント屋の知り合い、いないんだよね~」

 

店舗ファサード全面に張り出したオーニングテントを張り替えにまったく手を付けようとしないKさんに業を煮やしたぼくが指摘すると、Kさんは相変わらずのフニャフニャとした言い訳をするばかりで、遅々として作業に取り掛かりません。

 

 

いつもご自宅でイジってる機械を使って探したらいかがです?

 

これくらいの皮肉ではノーダメージなのがこの手の人たちの特徴です。

 

 

「うん。テント業者さがしてみるわ。んじゃ、おつかれ」

 

そう言ってまだ陽の高い1月の寒空の下、Kさんは路上駐車したままの車に乗り込んで帰宅していきました。

 

 

 

その数日後、テント業者を見つけたというKさんから「もらったロゴのデータが開けないんだけど!」と何故かぼくが手痛くクレームを受けるという珍事が発生しました。

 

 

聞くと案の定、KさんのPCにはIllustratorがインストールされておらず、工務店的な事業を営む人間とは思えないレベルのリテラシーでした。

 

はぁ。。。。( ´Д`)=3

 

 

「おれじゃわからないからテント屋と直接やりとりしてよ」

 

 

言うにこと欠いて、自分の仕事さえ放棄してきます。

 

 

 

やむを得ずテント業者さんと名刺交換をし、電話でやりとりをしながらアンカーポイントの修正などをしつつロゴ入りのターポリンを作って頂きました。

 

はぁ。。。。( ´Д`)=3

 

 

とはいえ、たしかにKさんを排除したほうが総てがスムーズに進みます。(´・ω・`)

 

 

 

張替えの当日、真新しくなったターポリンには正確に拡大した「自意識過剰」のロゴ。

 

 

 

お世話になりました、ありがとうございました。

 

 

テント業者さんが帰っていく姿を見送ると、Kさんは間髪入れずに言いました。

 

 

追加料金であと40万かかるから。見積もりは明日持ってくる」

 

「え?」

 

「この40万は工事終了後の振込でOKだからさ」

 

 

 

 

実はKさん、手付金として工事前に支払った100万円をなにか別のことに使ってしまったらしく、それまでも工事期間中に追加で入金を迫られていました。

 

 

それも一度だけではなく、お金がなくなるとその都度追加入金を迫ってくるのです。

 

 

というか、恥ずかしながら、この時点で既に工事費の全額を振り込んでいました。

 

 

 

なんで払っちゃうの? おれ馬鹿なの?

 

確かに自分でもそう思います。

 

 

 

工事途中で持ち逃げされる可能性だって無くはないので、工事が終わって納品完了するまでは残金を支払わないのが極めて基本的ななセオリーです。

 

 

 

しかしKさんの論法はこうです。

 

「公庫から融資受けたんでしょ? なら金あるじゃん」

 

「追加で払ってくれないと工事が次の段階に進まないよ」

 

「だってオレ、金無いから。部材も買えないし」

 

「テント屋の分だって、初めての取引がから買掛ができないしさ。全額現金で払っちゃったよ、あーあ勿体無い」

 

 

 

そうです。

 

 

Kさんはお金の事になるととことんみっともなく振る舞える人なのです。

 

 

「とにかくあと40万ね。見積もりは明日ね。支払いは工事終了まで待ってあげるからさ」

 

 

 

はぁぁぁああっ????!! である。

 

 

そっちの勝手な都合だろクソジジ!!! である。

 

 

こいつふざっけんなよっ!!! なのである。

 

 

 

せめて愚直に頑張っているけれど収益が出ないから値上げをお願いしたいというならまだしも、自分は現場にもほとんど顔を出さないくせにゼニだけ先によこせとは見上げた根性です。

 

 

 

その上、足りなければ見積もりを新たにでっち上げる。

 

 

ぼくもそんな厚顔無恥なクソジジイになれたらさぞ幸せだろうな。

 

 

 

そう考えると、このクズからも学ぶ部分があるのかもしれません。

 

 

いや、大部分が軽蔑すべき箇所で形成されてはいますが。

 

 

 

 

・・・・でもちょっと気になるな。

 

 

どうしてKさんは、そんなにお金がないのだろう。

 

 

自宅の家賃の本人負担はゼロ。

しかし借りている駐車場の料金は八ヶ月滞納している。

「浅草の社長」という人たちと賭けマージャンをしては毎回カモにされている。

カモにされた分、「浅草の社長」から仕事を請け負っているので「チャラ」だと考えている。

仕事の利益率は20%(本人談)で、年間の売上は数千万円。

大きな借金は無い。

この時点でぼくが認識しているKさんのふところ事情は以上で、それらから考察しても、さらにぼくから巻き上げなくてはクビがまわない状態というのは不自然な気がします。

 

 

「公庫から融資を受けたんだから、今○○百万くらいは口座に入ってるでしょ」とか平気で探ってくるタイプの人なので、ぼくからできるだけ巻き上げようとしているのは非常に伝わってくるのですが。。。。(´・ω・`)

 

 

 

 

しかし前職場の常連だったKさんから見れば、ぼくはいきつけの店の元店長という関係なのです。

そいつが独立するので店舗の造作工事を請け負う。

ならば悪いようにはしないと思うのが人情ではないでしょうか。

 

 

 

なんというか、こう、もう少し人的資産を大切にすべきだと思うんですよね。

自分で言うのもナンですが。。。。。

 

 

きっと、Kさんには旧知の人間からボッタクらなくてはならない事情があるに違いない。

 

うん、きっとそうだ。

 

やむを得ない事情があるんだろう、きっと。

 

 

 

 

 

そう。オレの名前は濱マイク。本名だ。

 

気になったぼくは、秘密裏に大工さんや設備屋さんからの聞き込み調査をはじめました。

 

 

 

 

すると、驚くべき詐欺まがいなKさんの手口が浮かび上がってきたのです。

 

 

 

未完成状態のロゴ↑

 


前回まではこちらから

【実録☆開業日記0】店の名は。

【実録☆開業日記1】限りなく不透明に近い立地戦略

【実録☆開業日記2】出会って4秒で申込書にサイン

【実録☆開業日記3】創業計画書の理想と現実

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