合法的借り方のすすめ【実録☆開業日記5】




合法的借り方のすすめ【実録☆開業日記5】

 

【前回】

伊藤リオン被告を一貫して「その方」と表現し続けた市川海老蔵の記者会見のように、精一杯「誠実な感じ」を演出してなんとか事なきを得た面談の数日後、普段は滅多に鳴らないぼくのiPhoneがけたたましく着信しました。

 

「お世話になってます」

受話器の向こうは、新中野の物件を管理している不動産会社の担当者でした。そう、ぼくが申込書に記入している姿を何故か半笑いで眺めていたあの人です。

 

 

挨拶も早々に、担当者は次のようなことを極めてストレートに言い放ちました。

 

貴方は該当物件を借りられない。理由は本日の午後、競合で該当物件を申し込んでいた別の女性が手付金を入金したからである。手付金を受け取ったので、賃借権はその女性にある。それじゃ。アディオス。チャオ。グッバイ。再見。アンニョヒゲセヨ~。

 

 

 

まだ20時位でしたがすでにブリンブリンに酔っ払っていたぼくは、突然の出来事に思わず言葉を失いました。

 

 

その物件に出店するつもりで名刺やショップカードを制作していたし、公庫にもその場所に出店すると説明していました。

物件の内部を自分でメジャーで測りながら図面も作っていたし、改装が必要な箇所を洗い出したり厨房機器の寸法を計算しながら業務用厨房機器を探していたのです。

確かに最初の内見の時点で、他にもこの物件に興味を持っている人がいるとは聞いていました。

 

 

 

でも・・・である。

 

 

 

 

 

先に申し込みをしたのはぼくだし、その後の融資や入金の段取りも説明しました。

採寸だって快く対応してくれたし、当然ぼくが借りる物件だという認識でした。

取引予定の酒屋さんにも住所を伝えてあるし、食材の業者の選定にも着手してました。

 

 

 

そんな数日間におよぶ業務が、すべてオジャン。

 

 

 

「え・・・・・じゃあどうすればいいんですか????」

 

 

酔っ払った頭でもさすがに「筋違い」と判る疑問を電話越しにぶつけてみるも、相手は「残念ですが」としか言いません。

 

 

 

残念なのはそっちじゃなくてこっちだろ。

ていうかドライ過ぎるだろ。

数百万の借金をして人生を決めるような局面で、あまりにドライ過ぎるだろ。

SUPER DRY極度乾燥(しなさい)かよ!!!

 

 

 

 

そうです。

 

晴天の霹靂ってやつは字義通り、突然やってきて総てを台無しにするのです。

 

 

 


・落とし穴ってやつは落ちるまで気づかない

後に教えていただいたのですが、もし不動産屋に「手付金は不要」と説明を受けた場合、それは「まだ申込みの門戸を閉じていない状態」という意味がある。のだそうです。

つまりその物件は自分以外の人とも並行して商談をしているという意味なんだそうです。

 

人生で十回以上の転宅を繰り返している僕ですが、そんなコト、知らなかった。

 

 

 

 

不動産管理会社にもよるし、大家さんにもよるのですが、事業用物件申し込みのルールにはいくつかパターンがあります。

1,申し込んだ順(早い者勝ち)

2、申し込みは期限まで受付け、申込者は全員事業計画を提出。出揃った事業計画を見て大家が借り手を選別するパターン。

3、申し込みが済んだら賃貸契約の初期費用の計算書を渡すので、その金額を先に振り込んだ人に物件を貸しますパターン。

 

 

は?ってゆーかそんなの知らねーよ!

などと中指を立てても借りられないものは借りられない。くそう。

僕のほうが先に申込んだのに、競合相手が物件を取得した。

その事実は僕を落胆させました。

 

 

 

と同時に、ある不動産ブローカーみたいな人から学んだ事があります。

それは。。。

 

 

 

 


・ギョーカイ人風不動産屋が教える裏ワザ

 

気に入った物件は、とりあえず申込んだほうがいいですよ〜。

ある不動産仲介業の男性に言われました。

 

「きっとこの物件は申込みがすぐに入ってしまう人気物件です」

もしそうカマされたら、とりあえず申し込みを入れるべきですよ〜。

どうせ新規出店の個人事業者は「事業計画を出し合うタイプの競合」になったらまず勝てません。

既存店をもっている法人の方が安定していると見られますからね〜。

どうせ勝てないのなら、複数の物件に二股、三股をかけてでも申し込むべきですよ〜そりゃ〜。

仲介業者は申し込みの履歴でお客さんの「本気度」を測りますからね〜。

思慮深く慎重に悩んで申し込みを見送っている人は、「何も動いてない人」と見なされますから〜。

そういう人には、掘り出し物件が出ても連絡はくれませんよ〜当然。

 

 

目から網膜が落ちるほどの驚愕でした。

 

さすが青山の眺めの好い場所にオフィスを構える不動産業者は考え方が都会的だな。

なんとなくそんな風に思いました。

 

 

でも、である。

 

三股をかけて申し込んだ物件が、もし三つとも審査に通ってしまったら??

 

その場合、ヤバくない?? 三件も借りるお金持ってないっすよ。

 

などと素朴な考えを抱いているぼくの田吾作っぷりに呆れるような都会的でシャープな切り返しで彼は言いました。

「あ、そしたら一番借りたい物件以外はテキトーに嘘ついて断っちゃえばいいんですよ〜」

 

 

 

そうか。

ふふふ。ならば実践あるのみ。

 

 

【続く】