出会って4秒で申込書にサイン【実録・開業日記2】

先日、ある常連のお客様が、十年前にジャケ買いした中国人ジャズ・シンガーのアルバムのプロデューサーだと知り驚愕している次第です。

「ミュージシャンという職業の人って実在するんだなぁ」

狭いコミュニティの中でさえ心という名の途方もない閉所に閉じこもって孤独を感じているような冴えない人生のボクにとっては、華やかな方々というのは、ある種、空想の存在のようにさえ感じます。ましてや自分がよく聴いていた作品なだけに感慨もひとしお。

情報化社会とはいえ、情報として把握した知識と、眼の前のリアルとでは圧倒的な説得力の差がある。そんな風に感じました。


さて、特に書くこともないので「実録☆開業日記パート2」の続きでも書きたいと思います。

 

・婚活サイトみたいな不動産サイト

「職住混在の駅チカ小規模物件」での出店を企てた僕が、より具体的に物件の絞り込みに入るため最初にだした条件は「ぼく自身の職住近接」でした。

 

 

例えば、人生において自分でコントロールできるコトってどれほどあるだろうか。

 

友人。信仰。趣味。

 

憲法によって職業選択の自由は保証されているけれど、決して希望した職業に就けるというわけではない。

 

働く場所だって、就職した会社のオフィスがある場所だったりして、自分の望みどおりにならない。当たり前だけれど、その当たり前をひん曲げたいタイプの天邪鬼な僕は、これを機に自分の「働く場所」を「自分の都合」で決めてしまおうと考えました

そもそも時間という有限なリソースを削り取るような長時間通勤は非効率だし、コストもかかる。

 

田舎者の僕は満員電車が怖いし、自家用車を所有する余裕なんてない。

 

 

「・・・新宿区か中野区だな」

 

 

おしゃれで繁華なエリアへの出店を既に除外していた僕は、さしあたって隣接する2区に目星をつけました。

 

 

 

出店予定地域と想定面積が決まれば、あとは簡単。

 

 

 

複数の飲食店専門不動産サイトに登録し、条件を設定するだけです。

 

 

 

 

条件に合致する物件が出る度にメールで詳細情報が送られてきます。

 

 

例えばこう。

「初めまして。突然のメールごめんなさい。シンガポールと香港に会社を所有する未亡人です。この度は貴方様にワタクシの資産3000万ドルを相続して頂きたく、まずはその契約金として下記口座に・・・」

 

 

 


・ラブ不動産は突然に。

 

翌日から、無愛想で退屈な日々が始まりました。

 

 

たくさん物件情報を見ていると感覚が麻痺し、どの物件を見ても心の松田聖子がビビッと反応を示しません。

 

 

希望条件に符合する物件すべてで店を出す自分を想像しているうちに、どの物件で開業しても繁盛するイメージが描けなくなってきました。まるでボジョレー・ヌーヴォーの毎年の評価文みたいに、物件を吟味する目がインフレーションを起こしているようでした。

 

 

晴れない気持ちを忘れる為に、新しい相撲の決まり手を考える、立命館アジア太平洋大学がまさか大分県にあると知って驚くなどの人生の無駄な時間をじっくりと過ごしていると、ある日、最高に好条件の物件情報が送られてきました。

 

 

新中野駅2分、6坪強、賃料14万。保証金8ヶ月。造作譲渡50万。

 

 

早速、現地まで急行し、周辺環境を確認しました。

 

 

大通りから一本入った路地で、居酒屋としては申し分ない。街道は昼夜を問わず通行人がおり、近隣は銀行の支店などもあり商業地と住宅地が混在した理想の環境。

 

 

「すっげえ悩むけど、勝負してもいい物件だと思う」

 

絶対に大丈夫なんて事は決して言えないけれど、前向きに検討すべきだと思いました。

 

 

 

担当の不動産会社と連絡をとり、内見の予定を取り付けました。

 

 

元カフェ居抜きの内装は美麗で、新規に工事をする必要は殆ど無いと言っていい状況でした。

 

これだけの内装を50万で買えると考えればかなりお得。

 

 

その場で今すぐ申込書に記入したいと申し出た僕に、不動産会社の担当者はなぜか半笑いで頭を下げました。

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 


・期待しては肩を落とすマイライフ

結果から言うと、こちらの物件は競合相手に先手を取られてしまいました。

 

 

内見中にその場で申込書にサインしたはずの僕が物件を取得できず、僕よりも数日後に二度に渡って内見をして慎重に申し込んだ競合相手が物件を取得した格好です。

 

 

 

果たしてなぜこんな事が起こってしまったのでしょうか。

 

 

 

 

続く