限りなく不透明に近い立地戦略【実録・開業日記1】



居酒屋を開業するにあたって、まず何をすべきなのか。

どんな段取りで開業準備を進めるべきなのだろうか。

それが、僕が最初にブチ当たった壁でした。

繁盛店の店主による成功体験記や開業ハウトゥー本は掃いて捨てるほど並んでいるのに、小さな非繁盛店のおっさんが書いたフツーの開業記ってあまり見ないな。

学歴もなければ自己資金もほとんどない僕にとって、「俺のイタリアン」や「東京名酒場100選」などは参考にならない。

それらはいわば「武道館」であり、僕はまだ「ライブハウス」にも立っていない身分なのだ。ギターを買ったばかりの中学生が武道館に立つ自分を夢想したって、事業は始められない。

なんていうか、もっと「まちの小さな商店のおっさんが、どのように開業までこぎつけたのか」を参考にしたいんだよなぁ。

そう思い、それっぽい書籍を探しては読み進めていくも、結局は繁盛店の創業者がドヤ顔で繰り広げるオレバナに着地するだけで、村上龍のエッセイよりつまらないし、何の参考にもならない。

ましてやコミュ障で友達の少ない僕には、そっち方面の相談をできる友達など皆無。

果たして、どうやったら「自分の店」を開けるのだろうか。

 

もしかして : みんなそう思ってる?

 

不意に、頭の中のGoogle先生がヒントを提供してきました。

 

そうだ!

 

小さな店の立地戦略、不動産契約の段取りと居抜き物件の注意点、公庫の融資対策、改装費用を安くおさえる方法、仕入れ先の選定と交渉、店名やロゴ制作、DIYによる改装、人材確保、運営備品の調達、独力でのホームページ制作、助成金の申請。

それらの開業準備を当事者が生でレポートしたら、きっと後進の方々の役に立つ情報となり得るのではないだろうか。

ハローワークで三十代にもなって正社員の経験は飲食のみの貴方は社会的にすでに手遅れなので転職とか考えずに社会の底辺でせっせと働けという意味の言葉を遠回しに突きつけられた無能な僕ですが、自分の体験をシェアすれば少しでも誰かの役に立つかも知れない。

IT起業家みたいなドラマもなければ、もちろん高尚な教訓もない。だけど、せっかく一生に一度しかない体験なのだから、記録として引き続き「実録☆開業記」したためていこうと思います。つたない文章ですがよろしくお願いいたします。

(あのハロワの担当、今度会ったらチョキで殴ってやろうと思ってます。くそぅ)

 


限りなく不透明に近い立地戦略【実録・開業記1】

・物語性のある場所に出店したいっ!!!

アップルならスティーブ・ジョブスの実家のガレージだったし、ソニーなら御殿山の倉庫。

とかく創業地は、その事業におけるストーリーの要点として後に語られます。

どうせ店を出すのなら、創業地に叙情的な意味を見出したいと思うのが人情ってヤツではないでしょうか。

 





・人は見た目が9割、店は立地が9割。

好立地への出店がゲームを征する。

なんて言われるほど飲食店の成功は立地が重要で、それは卒業大学がその人の後の人生の具合を左右してしまうのによく似ています。

逆に言えば、出店立地をこれから選定するというのは、履歴書に書く卒業大学名を自分で決めていいというのと同じくらいアドバンテージのある状況とも言えます。

もちろん僕なら迷わず「東京大学医学部卒」と書きます。

んで、看護学生と合コンします。イェイ。

 

とはいえここは、生き馬の目を抜く飲食業界。

そんなイカ臭い感情に牽引されて出店エリアを決めてしまうバカの店など、瞬殺で廃業に追い込まれるのが関の山です。はい、わかってます。


・消費者が店の家賃を払っている

例えば都心や湾岸のオシャレなエリアと、私鉄沿線の住宅街の駅前。同じ面積の物件でも家賃は数倍違ってきます。

仕入れ値が同じなら、その数倍の差は「売値」で埋めなくてはならないため、お客様にしてみればコスパの悪い食事を強いられる結果となってしまいます。

言い換えるなら、郊外で食べる定食と銀座で飲む一杯のコーヒーが同じ値段にも関わらず、行儀の良い消費者のぼくらは「銀座だから仕方ないよね」と土地の値段が乗っかった料金を支払っているわけですよね。

土地のブランド力を味方につけて、そうした「読み替え」を巧みに演出できれば良いのですが、我々のような零細事業主にはそんな魔法のソリューションなどこれ皆無。おしゃれとは程遠いマイライフ。

 


・「客単価を上げられないのなら、客数を増やせばいいじゃない」

フランス国王ルイ16世の王妃マリーは言った。という史実はない。

 

「売値」を上げるのは無理がある。

 

ならば、

「売値」を上げずに「客数」を増やせば、先述の問題は解決できるかもしれない。

 

往生際の悪い僕が次に考えたのは、小学校の算数で習った「速さ×時間=距離」を応用したありがちな発想での打開策でした。

「客単価(売値)」×「客数」=「総売上」という前提に則って、客数さえ増やせば好立地への出店も可能なのではないだろうか。

 

 

・・・・・だが僕はすぐにその手段を除外しました。

総売上を増やすために喫食数を増やす。

→喫食数を増やすには座席数を増やさざるを得ない。

→座席数を増やすには店舗面積を広げざるを得ない。

→店舗面積を増やすと賃料が上昇する。

 

って出口の見えない堂々巡りじゃんっ!

落ち着け。焦るな。素数でも数えてろボケ。身分をわきまえろオレ。

つーか、たぬきの皮算用で店舗面積を大きくする論法って「勝てばオールOK」と嘯いて高レートなギャンブルに手を出すようなもんじゃね?? あぶなくね??

柄にもなく深く自戒した僕は、やはり土地の値段が高いエリアへの出店を諦めたのでした。

 


・「ならば小さい店で小さく収益をあげよう」

「小さい店」を志すべき理由として、何よりも「潰れにくい」という点が真っ先に挙げられます。

帳簿をつけていると可視化されて解りやすいのですが、支出に対する人件費の割合というのは、店の規模に関わらず一定以上を占めます。

売上高を一定だとすると、支出部分を削って利益を追求することになります。

仕入れ価格を下げるという手段は、商品の質を下げ、ひいては顧客満足度を下降させるので除外します。

家賃などの固定費は不変なので、変動費で下げられる部分は必然的に人件費となります。

すなわち従業員を使わないというのが、利益の最大化を測る手段となるわけです。

店舗面積15坪で従業員がいる店と、5坪でおやじが一人でやっている店。家賃の坪単価と坪売上高が同じなら、後者のほうが利益は大きいのです。ふふふ、おやじ儲かってやがるぜ。

通常、大きい店や多店舗展開している店の方があたかも潤っているように錯覚しがちですが実際のフトコロ事情は、さにあらず。

大きいことは良いことだというアメリケンな発想に引っ張られて洗脳されているに過ぎないのです。これ、敗戦国のつらいところね。(虐殺行為はNO)

従いまして、僕は、従業員を使わず自分ひとりで運営できる規模の店を開業すべきだと考えました。

小規模店舗での開業というのは、MCバトルで後攻をとるくらい事業のアドバンテージが上昇するに違いない。そう考えたのです。

かくして僕は「駅チカ小規模物件」に立地戦略を絞って店舗用不動産を探し始めたのでした。

2016年は、まだ始まったばかりでした。

続く